謝辞、参考文献など、お決まりの項目がまとめられています。
共同研究者。彼自身は鉄道ファンでもなんでもないのに、 1カ月近くこの話題に付き合わせたうえ、定式化の大部分は彼に任せました。 また、他の研究室に話を通してもらったり、 最終日には半徹夜で計算に付き合ってもらうなど、頼りっぱなしでした。
高級なソルバーを使わせてもらったうえ、研究室に長時間居座り、 あげくのはてにソルバーを走らせたまま帰宅するなど、いろいろしました。 そのうえ松井先生には定式化に関して貴重なアドバイスをいただきました。 さらにOR誌への投稿をすすめてくださったのも松井先生です。 お世話になりました。
最長片道きっぷの研究は、 本来の私の研究テーマとはだいぶちがうことだったのですが、 先生方は輪講で発表した際などに特に拒絶することなく、認めてくださいました。 研究室に配属されて以来、IPL の根底には「コンピュータ関連なら何でもあり」 という精神があると勝手に思っていたのですが、 これが実証されたようで非常にうれしく思います。
そもそも最長片道きっぷについて研究してみようと思ったのはこのコラムが発端でした。
このコラムの内容は「整数計画法を用いて最長片道きっぷのルートを求めてみよう」
というもので、私たちとまったく同じことをやっているのですが、
「北海道発九州着となるのは自明」といった怪しい仮定をおいていたり、
タイプPの乗車券を考慮していなかったりと、結果には疑問が残りました。
著者らは学部生の実験課題としてこの問題に取り組んだということだったので、
「同じことを院生がやるんだから、精度では絶対にゆずれない」という、
大学院生の妙なプライドが目覚め、これが研究を加速させたという面もあります。
なお、
全探索で解く際に本州を分割するためのアイディアもこのコラムから得ました。
鉄道趣味界では「最長片道の仕事人(?)」としてちょっとした有名人の著者が、
鉄道ジャーナル社の「旅と鉄道」に寄稿したものです。
この記事には、1996年当時の最長片道きっぷのルートが地図入りで紹介されています。
今回、私たちが計算した結果もこのルートとほぼ同じものになりました。
具体的には、
相違点は九州内の新幹線の利用法(後述)と北陸新幹線関連の2点のみでした。
この記事にはルートの算出法については何も言及されておらず、
著者がどのようにルートを算出したのかにはちょっと興味があります。
私の記憶では、著者はかなり以前から最長片道きっぷのルートを求めていたはずで、
コンピュータが今より圧倒的に非力だったころはどうしていたのか、
ということに特に興味をひかれます
(ヒューリスティック一本槍だったらどうしよう…)。
同じく「旅と鉄道」誌に載った「Q&A」形式の記事で、
九州内の新幹線の利用法に関して言及しています。
1996年1月、3島会社の運賃が本州各社より高くなったのをきっかけに、
新下関以西の新幹線が「原則別線、
ただし発売条件に関する限りは従来どおり同一線」という扱いに改められました。
が、その際に新設された規程類の表現が適切でなかったせいで、
在来線と新幹線を別線として利用する乗車券が購入できると解釈できるようになってしまいました。
その結果として最長片道きっぷの距離をもっと伸ばせるのではないか、
という提案を津幡さんがしています。
結局、この「Q&A」の答えは、
JR九州が「そのような解釈はしない」という回答をよこしたため、
最長片道きっぷの経路は変わらないということになったのですが、
その後、JR他社から「やはり別線扱いする(場合がある)と解釈するのが妥当」
という物言いがついたとかつかないとかで(定かな情報源を示せないので断定を避けます)、
「別線扱いが可能」という解釈にもとづいた乗車券が発行されることもあります。
いわゆる「JRの規則」です。
正確には、JRと旅客との契約内容を定めた約款である「旅客営業規則」と、
細かな取扱方を定めた内部規定である「旅客営業取扱基準規程」から成っています。
「JR東日本編」とありますが、ほとんどの部分はJR6社で共通です。
各種の特例や新幹線の扱いに万全を期すため、
何度か生の条文にあたって扱いを確認しました。
そして最後にこの1冊。
最長片道きっぷを買って、そのルートどおりに旅行した記録です。
紀行作家として名高い著者の、比較的初期の作品で、
鉄道ファンでない人にも楽しく読める1冊です。
経由が裏面にびっしり書き込まれた乗車券を見て目を丸くする車掌の姿なんて、
想像するだけで笑えます。
なお、2013年4月現在、文庫版、
ハードカバーとも(改版あるいは復刻版のようですが)ネット書店で新品を入手できる状態にあります。