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PASMO 時代のカード選び

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 以上の点を理解のうえ、お読みください。

Summary

 鳴り物入りでサービスインを迎えた PASMO。オートチャージにかこつけて、 自社顧客の囲い込みを目的としたクレジットカードが私鉄各社から出ている。
 しかし、調べてみたところ、自分の利用法では Suica のほうが明らかに得であることが分かった。一方、私鉄沿線に住んでいると Suica を十分に活用しにくい事情があり、心ならずも PASMO を利用せざるを得ない、ということになりそうだ。
 以下では「PASMO 時代のカード選び」について、軽くまとめてみる。

 最初におことわりしておくが、 自分はクレジットカードのヘビーユーザーではないし、 航空会社のマイル蓄積にも興味がない。 したがって、以下の内容は「その筋の人」から見たら生ぬるい一方、 「多くの人がそこそこ容易に採用できる方法」ではあると思っている。 もし、誰でも容易に採用できて、よりお得な方法があればぜひ教えてほしい。


クレジットでなければ意味がない

 Suica でも PASMO でもそうだが、現金でチャージを行っている限り、 いちいちきっぷを買って乗るのに比べ、金銭面で有利な点はほとんどない。 経路が複数ある場合の運賃計算方法が紙のきっぷより若干有利な(ことがある)程度だろう。 もちろん「いちいちきっぷを買わなくていい」という便利さはあるが、 クレジットカードでチャージすれば「便利さ」だけでなく「金銭的なうまみ」も出てくる。
 ここでいう「金銭的なうまみ」というのは、 具体的には、クレジットカードのポイントだ。 ほとんどのクレジットカードは、利用高に応じてポイントがたまり、 一定以上たまると特典と交換できる。 特典の中にはたいてい「現金に近いもの」(ギフトカードなど)も含まれているので、 実質的にはキャッシュバックといえる。

 Suica や PASMO を電子マネーとして利用するときにも同じことがいえる。 電子マネーはライバルが多く、 これからは「1店で何種類もの電子マネーが使える」という状況も増えていく。 単に「タッチ1つで支払いOK、釣り銭不要」というだけで、 金銭的なメリットが皆無では、その電子マネーを選ぶ価値がないとすらいえる。

バスで使うのは損? PASMO・Suica

 バスに関しては PASMO・Suica 利用時に割引があるが、磁気の「バス共通カード」のほうがおおむね有利なので、 金銭面では利用価値がない。したがって、この文書では電車のみ考えることにする。
 本題ではないので詳しくは説明しないが、従来のバス共通カードは、 5000円のカードを買えば5850円分の「利用権」が得られ、 その5850円を何年かけて使い切ってもいい。いっぽう、PASMO の割引サービスは「1ヶ月間でバスを5000円分利用したら850円分のオマケを進呈」というもので、 1ヶ月に5000円以上利用しなければバス共通カードと同じ割引率にならない。
 ただ、都バスでは「PASMO・Suica 利用時、90分以内に2本のバスを乗り継ぐと2本目のバスを100円割り引く」というサービスがあり、 これはバス共通カードでは得られない特典だ(他社でも同様の制度が出てくるかも)。 現状、バスで PASMO を利用する金銭的なメリットはこれだけではないかと思う。


PASMO にクレジットカードでチャージするには?

 というわけで、PASMO を入手したら真っ先にクレジットカードでチャージをしたいわけだが、実はPASMO では、改札機でのオートチャージ以外、 クレジットによるチャージ手段はないのである。これだけで私は PASMO の利用意欲をそがれた。
 オートチャージというのは、自動改札機を通る際、 カードの残額が一定以下であれば、 自動的にクレジットカードからチャージを行ってくれるというものだ。 改札機を通るということは電車に乗るということだから、 チャージされる一方で運賃もかかる(例外は Suica・PASMO に定期券が載っている場合)。 オートチャージしたいがために電車に乗るというのは明らかに損だ。
 Suica の場合、駅のカード販売機や ATM に出向けば、任意の Suica に、好きな金額だけクレジットカードからチャージすることができる。 これらの機械はだいたい改札の外にあるので、 電車に乗らなくてもチャージが可能だ。 これに加え、Suica とビューカードが一体となった「ビュースイカ」には、PASMO と同様のオートチャージ機能がある。
 一方、PASMO は前述のようにオートチャージ以外のクレジットチャージはできない。 2008年に入り、オートチャージの金額設定(1回の入金額、 入金判定額)を変更することができるようになったが、 いくら多めにチャージしようとしても、 残額が「10000円」を下回った場合「10000円」をチャージ、 という設定が最大だ(カギカッコ内の金額を1〜10千円の範囲(1000円単位)で任意に設定可能)。 毎日電車に乗っている人でも「残額がぎりぎり10000円」という状態があるので、PASMO 電子マネーで1万円を超える大きな買い物をしようと思うと、 「残額の多いタイミング」を見計らうか、 現金チャージで補充するかしないといけない。

 巷では「PASMO が売れすぎて販売中止」などと騒いでいたが、 以上のような事情を知っていると、なぜそんなに PASMO が売れるのか、理解に苦しむ。


PASMO 対応のクレジットカード、還元率は?

 Suica でも PASMO でも、 クレジットカードでチャージを行うには特定のカードを持っていなくてはならない。 Suica ならJR東日本が発行する「ビューカード」、PASMO なら、(株)PASMO の「Passtown カード」もしくは各私鉄の発行するカードが必要だ。
 上記の各カードをざっと眺めてみたが、単純に鉄道だけを利用する限り、 ビューカードを上回る還元率はほとんどないということが分かった。 ビューカードで Suica にチャージすると1.5%相当のポイント還元があるが、 私鉄各社だと0.5%というのが一般的。 キャンペーン中はポイント3倍とか、 キャンペーン中は1カ月に1回利用するだけで何ポイント進呈とかいうのはあるが、 そういうのはわずか数カ月で終わってしまう。
 PASMO 対応の一部カードでは、利用金額に応じたポイントのほかに、 「1回乗車するたびに○ポイント進呈」 「1カ月の利用回数に応じて○%のポイント進呈」というのもあり、 使いようによっては Suica より得になる可能性がある。 しかし、カード発行社以外に乗ってもこのポイントはつかない。 ある特定の会社をひんぱんに利用するなら、 回数券を買ったほうがトータルで安い場合が多いだろう。
 この前調べてみたところ、PASMO や Suica のチャージを利用して、回数券を買うことができるようだ(JR、 小田急で確認)。ということは、ビューカードでチャージした Suica を使ってJR・私鉄の回数券を買うと、 回数券の割引とビューカードのポイントが両方得られる。 私鉄を週2、3回利用するという人は、単純に考えると PASMO に向いていそうだが、実は Suica+ビューカードの組み合わせのほうが有利かもしれない。


Suica は万能か?

 このように見てくると、Suica は常に PASMO より得で、PASMO を持つ価値はまったくないように思えてくる。 実際、自分自身に関していえばそうだと思う。
 しかし、JR沿線に住んでいない人の場合、話は少し変わってくる。

どこでチャージするか

 まず、どこでチャージするかという問題。Suica であれば、前述のとおり、 カード販売機などでビューカードから任意の金額をチャージできるが、 JR沿線以外には「クレジットでチャージできる機械」がほとんどない
 オートチャージは私鉄の駅でも可能なので、 オートチャージの設定を最大(1万円を切ったら1万円チャージ) にしておけば一定の対策にはなる。しかし、電車にあまり乗らず、Suica をもっぱら電子マネーとして利用する場合には心細い。
 これらの問題をクリアできるのが、オンラインでチャージできる「モバイル Suica」だが、対応する携帯電話を持っていないといけない。 また、携帯電話の通信料が定額制でない場合には、 チャージするたびに通信料が発生する。そして、モバイル Suica は券売機に入らないので、きっぷは買えない。前述の「Suica で私鉄の回数券を買う」という技は使えないことになる。

PASMO 定期券との親和性

 次に、PASMO 定期券を持っている人には、Suica がなじまないという問題がある。
 Suica に載せられるのは「Suica 事業者を含む定期券」だけなので、たとえば小田急と東京メトロの連絡定期券を Suica に載せるようなことはできない。選択肢は「磁気か PASMO か」しかなく、利便性を考えると PASMO 定期券を選択することになるだろう。
 しかし、PASMO 定期券と Suica を両方持つということは、かなり面倒だ。同じ定期入れに PASMO と Suica を両方入れていたら、 どちらが読み取られるか分からないし(両方読めない可能性もある)、 定期券の区間内と区間外にまたがって乗車するときには、PASMO 定期券の「乗り越し機能」を利用するのが圧倒的に便利だ。PASMO 定期券を持つことが必須であるとするなら、「乗車用は PASMO、電子マネー用は Suica」と使い分け、Suica は定期入れではなくサイフに入れておく…というぐらいしか、 うまい方法がないのではないかと思う。
 そして、PASMO 定期券を買うという前提なら、 私鉄各社のクレジットカードを持つことに意味が出てくる。 私鉄では未だに「定期券は自社クレジットカードのみ利用可」というところが多く、 そういう会社では、PASMO 定期券を買うときの選択肢は「現金」「その会社のクレジットカード」のいずれかしかない。 後者で PASMO 定期券を購入すれば、少ないながらもポイントは貯まる。 あとは年会費との相談だが、定期券がそこそこの価格であれば、 年会費ぶんはペイすると思う。
 で、現状「ビューカード」も「私鉄のカード」も持っていない人だと、 私鉄のカードを作ったところで「まぁいいか」と思い、 わざわざ電子マネーだけのためにビューカードを作る気がしなくなる、 というのがふつうだろう。かくして、私鉄沿線の人は、 低いポイント還元率でありながら、私鉄陣営にもくろみどおり囲い込まれてしまう。

ポイント還元のハードルを越えやすい

 また、私鉄沿線在住なら、その私鉄のクレジットカードを持ったほうが、 ポイント還元のハードルを越えやすいかもしれない、という事情がある。
 ビューカードの場合、換金性の高い特典に交換するには、 2年間で400ポイント(交通費換算で67000円)利用しないといけない。 利用明細の郵送を断ると月に20ポイント貯まるので、 うまくするとこれだけで480ポイント貯まってしまうのだが、 月に1回もカードを利用しないとそもそも利用明細が発行されず、 この場合20ポイントはもらえないので、少しばかり工夫がいる。
 一方、私鉄沿線に住んでいて、その私鉄のクレジットカードを持つ場合、 沿線の至るところでポイントを貯めることができ、 結果としてポイント還元を得やすい、という可能性がある。 特に、今すでに私鉄系列の百貨店のカードを持っている人は、 おそらく「百貨店で貯めたポイント」と「電車で貯めたポイント」を合算できるはずで、 ポイントを「換金性の高い特典」に交換することも容易になる。

既存のクレジットカードとの連携

 最後に、これは私鉄沿線在住者に限らないのだが、 私鉄各社の発行するクレジットカードには大手カード会社との提携カードがあり、 すでに持っているクレジットカードとポイントが合算できる場合がある。 すでに持っているカードが「累進性」の高いもので、 利用額が増えれば増えるほどポイント換算率がよくなるような場合には、 Suica+ビューカードよりも得になる場合があるかもしれない。
 ちなみに、JR東日本のビューカードには「累進性」はほぼなく、 ポイントを「換金性の高い特典」に交換するための年間最低利用額もわりと低い。 そのわりに Suica チャージ時のポイント換算率は1.5%と高いし、ビックカメラ Suica カードなら一般の買い物でも1%のポイントがつく。 このため、交通関係だけに利用したり、 もともとクレジットカードの利用額が低かったり、 というライトユーザーには向いているといえる。


まとめ

 JR沿線に住んでいる場合、あるいはJRと私鉄の連絡定期を持っている場合、Suica にビューカードでチャージするというのが王道だ。特に、Suica や PASMO をもっぱら電子マネーとして利用しようという人には絶対に Suica のほうがお得だ。
 一方、JRと縁のない生活をしている人で、Suica にクレジットチャージする手段が身近にない場合、PASMO 対応のクレジットでオートチャージ、というのが次善の策となる。



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最終更新: 2008年 7月 9日
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