運転免許騒動記
免許取得への道 Part 21
2003年1月5日:本山交通公園潜入レポート

 実家近くの公園は「一発試験」派の強い味方か?


本山交通公園、まずは偵察

 1月4日の午前中、近くにある本山交通公園を偵察にいった。
 どこかに書いたかもしれないが、本山交通公園というのは神戸市の運営する施設で、 公園のほとんどの部分を、自動車教習所を小さくしたような練習コースが占めている。 このコースを用いて、警察OBが車の練習に付き合ってくれるほか、 子供向け・高齢者向けの交通安全教育も請け負っているという。 土曜・祝日は車の練習が休みなので、 歩行者や自転車が自由に立ち入ってよい(その他の日は外周のみ立ち入り可)。
 今日ここを訪れたのは、滞在期間中(といっても可能性は明日しかないが)に、 ここで縦列駐車や方向変換の練習ができないだろうか?と考えたためだ。 広い意味での「縦列駐車」「方向変換」はふつうの路上で練習できるが、 試験におけるそれはコースの幅や長さが厳密に定められており、 その規格に則ったところで練習しないと合格は難しいかもしれない。 運転の練習のために作られたこのコースなら、 その「規格に則った練習」ができるかもしれないのだ。
 まずは、年始の営業開始日を知るために事務所へ行ったのだが、 貼り紙は何もなく、ドアは施錠されていた。 しかたなくコースを歩いてみたが、ぱっと見たところ、 クランクやS字はあるのだが縦列駐車や方向変換のコースは見当たらず、 こりゃ、かりに明日から営業でもダメかな、というのが結論。 全国的にもそう多くないであろう自動車の練習施設が家のすぐ近くにあるので、 できれば「指定校に通わない免許取得」に活用したかったのだが。


今年初の客になる

 1月5日、日曜日。帰京を明日に控え、やはり心は曇りがち。 午前中、渋滞を気にした父が早々に家を出ていったので、 これで車の練習もできなくなってしまった。

 と思ったら、別の手段が残っていた。昨日のぞいてきた本山交通公園である。
 昨日は「営業開始日が不明」「縦列駐車・方向変換コースがなさそう」と、 マイナスの印象ばかりを受けた交通公園だが、 今日は日曜日、通常なら朝から夕方までばっちり営業しているところだ。 市の広報によると市立図書館も今日から開いているというし、 もしや…と思って行ってみることにした。
 事務所のある建物にあいかわらず人気はなかったが、扉の鍵は開いていた。 外は強風でひどく寒いが、中に入ると、 冬の陽とストーブがやわらかな暖かさを作り出していた。 古い局舎の郵便局にでも来たかのようだ。
 窓口をのぞいてみると、受付にはおっさんが座っており、 その奥には指導員数名が手持ちぶさたでテレビを見ているようだった。
「すいません、今日やってますか?」
 聞いてみると今日から営業しているという。 毎時00分、30分が区切りになっていて、 練習は30分単位で可能なので、11時から1時間ぶん申し込んだ。 30分2100円というねだんは、かつてなら高いと思ったが、 教習所に通ってみるとこんなものだろうと感じられる。


縦列駐車の教えかた

 いちおう受付時に「縦列駐車と方向変換の練習がしたい」と申告したのだが、 昨日歩いたところではそれ用のスペースはなさそうだった。 どうやって練習するのか、と思いつつ地上に出て待っていると、 やってきたのはおそらく警察OBの指導員。 現役警察官の愛想のなさは二俣川でいやというほど見ているが、 OBになるとこうも変わるのか、と思うほど温和な人だった。 もちろん個人差もあるのだろうが。
 出てきた車は教習車としては大型のもので、 運転席に座ってみるとハンドブレーキがスイッチ状になっていた。 そういえば数年前、北海道でレンタカーを借りたときにもこういうのに当たったな。 足でペダルを踏むとハンドブレーキがかかり、 解除するときは手でスイッチを引っ張るのだという。
 さっそく運転開始。二俣川自動車学校に負けず劣らずの狭さで、 しかも直線部分が少ないのでスピードは出せない。 …いや、ちがうって。今日は縦列駐車と方向変換のために来たのだ。 いったいどうするつもりなのだろう。
 と、車は交差点を右へ曲がった。 何やら道路の左端には柵(一軒家の庭にありそうなやつ)がせり出していて、 道幅が狭くて運転しづらいな…と思っていたら、 なんと、ここが縦列駐車の場所だった。 てっきり黄色と黒の棒が立っているものだと思っていたが、 そうでないので昨日は見落としたようだ。
 ということで、ちゃんと規格に合ったコースで縦列駐車の練習を始められたのだが、 指導はまさに「便法」であって、他の車で通用するのか?というものだった。 縦列駐車を始める場合、 駐車スペースから車の左端までは80cmほどの幅を空けておくのがいいらしいが、 その80cmの測りかたは 「ボンネットのへこみの向こうにポールの根元が見える程度」だという。 ボンネットのデザインがちがうだけで応用不可能になるじゃん!とつっこみを入れたいところだが(それに座高や座りかたがちがっても見えかたは変わってくるぞ)、 ぐっとこらえて説明を聞くと、 ハンドルを切り始めるのは「背面のガラスと左後のガラスの間の柱に、 駐車スペースの一番右前の棒が隠れたとき」だそうで(これはまだ応用可能か)、 そこで止まったまま(!)ハンドルをいっぱいに切り、 バックミラーを見て、駐車スペースの後ろ、 左から2番目の棒が車体の延長線上に見えたところでハンドルをまっすぐに戻し、 右前の棒がボンネット左前端の印の真横に並んだころにハンドルを逆に切る。 で、あとは左側のバックミラーで縁石を見ながら角度を整え、 まっすぐになったらハンドルを戻さずに「終わりました」と申告せよ、という。 これを書いているのが練習の1日後だが、 正しく覚えているかどうかすでに自信がない。


方向変換は駐車場使用

 ようやく縦列駐車が終わったと思ったら、今度は方向変換。 いったいどこでやるんだ?と思いながら言われるままに車を走らせていくと、 なんと、今度は職員用駐車場の1台分のスペースであった。 こちらはちゃんと黄色と黒の棒がついているが、まさかこんなところでやるとは。
 方向変換も便法の連続だった。 まず、反時計回りに駐車スペースに入る場合、右端はやはり80cmだというが、 その測りかたは「ボンネットの右前端の印の延長上に縁石が見えるように」。 曲がり始めるタイミングは、 後部座席のガラスに貼ってあるシールの端に縦の縁石が見えたとき。 ただ、あとは窓から顔を出して内側に気をつけていればいいので、 この点は縦列駐車よりも楽。逆向きも似たようなものだった。
 何度かやったが、時計回りに入るのがどうもうまくいかず、 いつも曲がり始めが遅くなる。 そういう場合にはいったんハンドルを逆に切ってぎりぎりまで前進し、 そこでハンドルを戻してふたたびバックするといい。 これを何度も体験できたのは収穫だった。
 最後に縦列駐車をもう一度やったら、助手席のキッチンタイマーが鳴った。 1時間経過したのだろう。実にのどかだ。


「指定校嫌い」の味方がまた一つ…

 練習を終えたあと、ふたたび事務室を訪れた。 写真が展示してあるので見てみると、この公園、できたのは昭和40年代後半。 バックに工場が写っていたり、 工場の引き込み線を走るSLの写真があったりしたところから想像するに、 何かの工場の跡地にできたのではないだろうか。
 家に帰りながら考えた。以前は実家も下宿も自動車教習所(指定校)の近くにあり、 通うには苦労しない立地だったのだが、 あえて通わないでいたら実家は移り、下宿は引き払って寮に入った。 しかし今度は実家の目の前が本山交通公園で、寮は二俣川にほど近く、 指定校に通わずに免許を取るのに絶好の立地となった。 これも何かの縁だろう。 「(指定校に)通ったほうがいいんじゃないの」という言葉を家族から受けてはいるが、 やはり私は試験場での直接受験を選んでよかったのだ、と再確認する。

 と、練習当日はここで終わっていたのだが、この年の4月に、 本山交通公園は「個人向け運転練習」の業務をやめてしまった。 おそらく慢性的な赤字で、 待機する指導員の人件費や車の維持費もばかにならないということなのだろうが、 指定校に通わず免許を取る人にとって貴重な練習施設がまた1つ減ったということはゆゆしき事態だ。


本日の支出

教習料金(本山交通公園) ‥‥‥‥‥ 4200

Part 21 小計 4200
これまでの合計 189340


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最終更新: 2003年 9月25日
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