運転免許騒動記
免許取得への道 Part 27
2003年3月7日:すべり込みセーフ

 コンディションが悪いとき、結果は意外によい。


キャンセル待ちの実際

 3月7日。今日は5回目となる技能試験の日である。
 今回は初めてキャンセル待ちで受験することにした。 というのは、最初に指定された試験日が不都合で、 翌日に変えてもらおうとしたら「翌日はいっぱいです」と言われたから。 私といっしょに不合格になった人が翌日の枠を埋めてしまったのだろうか。 納得がいかないながらも、できるだけ早く受けたいと思ったので、 必ず受験できるという保証がないものの、 指定日の翌日から受験可能なキャンセル待ちを選択したのである。
 キャンセル待ちなら、指定日の翌日以降、いつでも好きなときに受験できる。 といっても、もちろん「キャンセルがあれば」の話だ。このへんの駆け引きは難しい。

 キャンセル待ちなので用心して、 開門時刻である7時10分に着くように二俣川に行った…つもりだったが、 電車の時刻を数分まちがえて、着いたらすでに門は開いていた。 学生ならすでに春休みの時期だから、 ひょっとしたら開門と同時に数名が建物にダッシュして「名簿順」 を争うのではないかと危惧していたが、今日は雨のせいか、 開門から少し経っているのに名簿は真っ白だった。晴れて「名簿順1位」となる。 受けられると決まったわけではないものの、たぶんだいじょうぶだろう。
 あとはひたすら受付開始を待つ。この時間がもったいないと思うが、 実はたかだか1時間強なので、極端に長いわけではない。 受験番号1番で技能試験を受けると、発表までにこの程度は平気で待たされる。
 8時半から受付開始。 だれか1人でも寝坊して休んでくれれば…と不謹慎な期待をしながら、じっと待つ。 そして8時40分ごろだったか、「キャンセル待ちの方、 全員受験できます」という放送。よしよし。 普通路上のキャンセル待ちは私1人だけだったようだ。
 キャンセル待ちだから受験番号は一番後ろになるのだが、 番号札をもらってびっくり、13番である。 一度にこんなに受験できたっけ? いつもは10番そこそこで終わっていたと思うが。 ひょっとしたら「だれもキャンセルしなかったけど、 キャンセル待ちが1人だからお情けで受けさせてやるか」という感じだったのかも。 ほっと胸をなで下ろす。


不遇の13番

 試験官は3人で、13人の受験者は4、4、5と分けられたので、 私は3人目の試験官の5番目。 通常の技能試験は2人1組で行う(先攻Dコース、後攻Eコース)のだが、 受験者数が奇数だから、私は単独で受験することになる。
 こんなときのためにあるのがFコースで、 スタートもゴールも試験場、行きが指示された経路で帰りが自主設定経路というもの。 いちおうこのコースを走ったことはあるが、それは路上教習の一番最初に1日だけ。 3ヶ月以上も前のことで、さすがに記憶があいまいになりつつある。 掲示されているコース図をあわててチェック、曲がるポイントを思い出した。

 そうそう、ここで「ある事実」を書かねばなるまい。 今日の課題は方向変換だった。
 ここまでずっと読んできた方なら、もうお気付きだろう。 今日が5回目の受験となる私だが、これまで5回とも、 縦列駐車ではなく方向変換なのである。 縦列駐車と方向変換の出題頻度が同じであれば、 このような事態に遭遇する確率は約3%。 判断は読者におまかせするが、単に私が強運だというわけではあるまい。

 受験番号が遅いというのは精神的によくないし、時間をむだに過ごすことになる。 イスのない場所で、いつ来るとも知れぬ自分の番をじっと待つしかないからだ。 今日のように試験官が複数だと、 たとえば受験番号7・8番は待ち時間ありだが9・10番なら待ち時間なしとなり、 いちがいに遅いのがダメとも言い切れないのだが、 「お情け」の受験番号13番はどう転んでも待たされる。
 しかも、13番は待ち時間も極端に長い。 「9・10番」「11・12番」という2組が終わるまで待つことになるから、 待ち時間は1時間をゆうに超えるのだ。
 しかし、そんな13番でも、運がよければもう少し早く乗れる場合もある。 9〜12番が早々にリタイアした場合ももちろんそうだが、 他種目(外国免許やらAT限定解除やら)が早く終わった場合、 そちらの試験官が普通免許に回ってくることがあるのだ。 このへん、「定時で上がる」という明確な目標を持っているせいか、 お役所とは思えないほど柔軟な対応をしている。
 以上のような事情はしっかり理解していた。何せもう5回目である。 しかし今日の待ち時間は予想をはるかに超えていた。 もしかして忘れられてるんじゃないの?というぐらいで、 いつしか待合室はがらんとしてしまった。


予想どおりのFコース

 しびれを切らしかけたころ、ついにお呼びがかかった。 予想どおり「一人芝居」のFコースだというが、 後部座席にはすでに試験が終わったとおぼしきおばちゃんがわざわざ乗り込んできた。 おそらく、公正な試験をやったということの証人として乗せているのだろう。
 雨の中、いつものとおり発車。正門前の渋滞はいつにもましてひどい。 なかなか正門から出られないでいると、 それほどせっかちではなさそうな試験官もしびれを切らして
「もう出られるんじゃないの?」
と言い出す始末。こちらは
「いや、(助手席から見えないところに)車がいるんですよ」
と自分の踏ん切りの悪さを必死にカバーしつつ、道が空くのを待つ。 これが単なる運転なら強引に出てしまうという手もあるのだが、 試験だから無謀なことはできず、これがまた難度を上げている。
 ようやく試験場を出ると、しばらくはこれまでと同じ道を走る。 あいかわらず路上駐車が多くて困ったものだが、 こういう車をよける動作はだんだんスムーズになってきた。 試験を受けながら練習、という当初の目的はいちおう達成できているわけだ。
 ちょっと意識して高めの速度を維持し、特に何事もないまま、 いつもよりちょっと早めの交差点で左折。 ここから先はほとんど記憶がなかったが、 まだ交代地点を迎えていないので試験官が案内をしてくれ、 特に迷うことはなかった。
 無事に半分を走りきり、ここからは自主設定経路で試験場まで戻る。 今いる路地から一刻も早く脱出して、 さっき走ってきた道に戻るというルートを指し示し、ふたたび走り出した。 無事に路地を抜け、あとはいつもと同じ帰り道。 このままいけば今度こそは…と、途中からちょっと完走を意識し始める。
 ところが、最後の最後、試験場の前がまたも大渋滞。 単なる渋滞ならいいが、 私の走っている側の車線が路上駐車(しかもトラック)で埋まっていて、 「交互通行」になっている。出発時と同様、苦しい展開になってきた。 前が見えないのでタイミングを見計らって出るしかないのだが、 「単線区間」で鉢合わせになったら、今の私の技量では何かミスをやらかすだろう。 試験官にせかされながら見切り発車で飛び出し、 結果オーライで冷や汗もののイベントをなんとかクリア。ふー。
 試験車の最後部が正門を通過した。試験官は黙ったままだ。
「……方向変換、ですか?」
 答えは YES。山は越えた。


方向変換、あせらずさわがず

 採点対象外となる場内の移動を気楽にこなし、いよいよ方向変換。 先日の練習で、何かを少々誤っても切り返しで対処できる自信がついたので、 それほど緊張することなくコースへ進入。
 駐車スペースに対して鈍角となるように車を入れ、 ブレーキを踏んでから後方を念入りに確認。 後退時の動作について教習を受けたことはないのだが、 ここ数回、他人の方向変換を見てきたところでは、 後方の確認をかなり念入りにやるのが推奨されているようなので、 見よう見まねでやっておく。
 そしていよいよバックを開始。 時計回りに車を入れるのだが、左後方はどう考えてもぶつからないことが分かった。 ということは右後方に余裕がないわけで、 窓を開けて右側の状態をうかがいながら、行けるところまではバック。 もうダメだというところでハンドルを逆に切って少し前進、 もう一度ハンドルを逆に切ってバックすると、右側には適度な空きが残った。
 時は来た。 念のため少し直進してからハンドルを右に切り、方向変換コースを脱出する。 最後部が無事にコースを出て、長かった技能試験が終わった…はずだ。
 後ろに乗っているおばちゃんと運転を交代し、余裕の表情で他人の方向変換を見る。 このおばちゃんも無事に方向変換を終え、発着場へ。

 発着場に戻ると、試験官の講評はなかった。2人ともだ。 これまでの経験では、合格であってもたいていは長々と講評を聞かされるものだが、 今日はよほど時間がなかったのだろう。


そして平塚へ

 発表は早かった。受付に戻ったら名前を呼ばれて、さすがに合格とのこと。
 今日中に証紙を買ってきたほうがいいと言われたので、 13400円ぶんの証紙を買っておく。ただしその場では使わない。 この証紙は取得時講習の代金で、講習を受ける自動車学校に出すべきものなのだ。 現金をいったん証紙に替え、 それを受け取った自動車学校が講習の対価としてその大部分を現金で神奈川県から受け取るという、 なかなかややこしいことになっている。

 嬉々として試験場をあとにしたが、 今後の予定を調整するのにはかなり苦労した。
 今さらながらかんたんに説明しておくと、ほとんどの種類の免許について、 技能試験に合格した人は「取得時講習」というのを受ける必要がある。 普通免許の場合は応急救護や危険予知、高速道路の走行などがその内容で、 指定校なら必ずカリキュラムに含まれているであろう項目だが、 受講場所がちょっと変わっている。 運転免許試験場ではなく、県内の指定自動車学校なのである。 どんなに指定校が嫌いな人でも一度は門をくぐらないといけないわけだ。
 しかし、その「門をくぐる」には一苦労する。 合格者には「取得時講習を受講できる指定校一覧」が渡され、 好きな学校を選んで自分で予約をとって講習を受けてこいと言われるのだが、 まず近場から「最速でいつ受けられるか」を問い合わせていくと、 今日は3月7日だというのに、どこにかけても3月中はもうダメだという。 つまり、最低でも約1カ月待ちである。 ひどいところなど「今は繁忙期なので休止しています」という回答だった。
 取得時講習は内容のわりに料金がいたって安く(7時間の講習で13400円は、 一般的な指定校の教習料金と比較するとかなり安い)、 利益はほとんどない(へたをすると赤字が出る?)はずだから、 こういうやる気のない自動車学校が多いのも理解できないわけではない。 しかし一方で、このような講習を引き受けなければ、 警察に非協力的ということで指定の取り消しもあり得るわけで、 「忙しいからやってません」なんて回答をよこした某自動車学校、 だれかが警察に告げ口したらどうするのだろう。
 探索範囲を広げても事情は変わらず、 どうしたものやらと思いながら電話をかけまくっていたら、ようやく当たりを引いた。 講習の空きは4月16日までないものの、他校とちがって1日で終了するという。 場所は平塚、距離的にあまり近いとはいえないが、 駅からはそこそこ近いので通うには苦労しない。 即座に受講を決め、数日後、正式な予約のために一度そこへ出向くことになった。

 予約の手続きはほんとうに一瞬で済んだので、予約日の記述は略す。 学校の印象などについては試験当日の記録を参照されたい。


本日の支出

相鉄 ‥‥‥‥‥ 190
受験料(普通免許) ‥‥‥‥‥ 2400
貸車券 ‥‥‥‥‥ 1000
取得時講習 ‥‥‥‥‥ 13400
相鉄 ‥‥‥‥‥ 190

Part 27 小計 17180
これまでの合計 226240


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最終更新: 2003年11月15日
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