定期乗車券

[Summary] こんなあなたに定期乗車券


 定期乗車券とは、一定の期間(ふつうは1・3・6カ月間)、 ある特定の区間に何度でも自由に乗車できる乗車券です。 いわゆる「定期券」のことで、特に説明などしなくても、 だいたいのことはご存じでしょう。 (以下、定期乗車券のことを単に「定期券」と書きます。)


制限が多いが安い「通学」、制限ほとんどなしの「通勤」

 定期券には、大きく分けて「通勤」「通学」の2種類があります。

 このうち通学定期券は、 通学のために鉄道を利用するときにしか発行されません。 通学のためですから、 自宅の最寄り駅と学校の最寄り駅の間のものしか買えません。 経路にしても、 原則として最短経路(あるいはそれに準ずる経路)しか認められないのがふつうで、 意図的な遠回りはできません。
 したがって、あり得る選択肢といえば「電車を使うか使わないか」というくらいで、 「上手に」使う、ということはあまりできません。ただ、安いことは確かで、 会社にもよりますが、たいてい数往復でもとがとれてしまいます。
 JRでは、「大学・専門学校」「高校」「中学」で運賃が異なります。 が、その他の大部分の会社では、中学生以上は同額です。 ですから、JRと私鉄が競合している区間では「中学生ならJRのほうが安いが、 高校になると私鉄のほうが安い」ということもあります。

 いっぽう通勤定期券は、「通勤」と名がついてはいますが、 実際にはどのような目的で鉄道を利用する場合にも発行されます。 つまり、通勤定期は購入するのに何の条件もいらないのです。
 ですからこちらは、工夫しだいで交通費の節減に使うことができます。


定期券か回数券か、選択の基準は?

 似たような乗車券、つまり 「ある区間にひんぱんに乗車するときに利用すると安上がりな乗車券」としては、ほかに回数券があります。
 定期券と回数券を比較すると、 利用頻度がある一線を超えれば定期券のほうが安い、 というのは想像がつくと思います。では、その「一線」とはどのくらいでしょう?
 以下では、例として東京〜横浜間(JR)について考え、 回数券と通勤定期を比較します。

1往復あたりのねだんで比較

 まず、1往復あたりのねだんを比較してみましょう。

 上記はほんの一例ですが、割引率に関してはどこもそれほど変わりはないので、 ある程度の目安にはなります。
 これを見ると、月に13〜17往復、つまり週4回以上利用するのであれば、 定期券を買ったほうが回数券よりも安くつくということが分かります。
 ただし週3回以下の利用でも、 以下に挙げるような「定期券ならではのメリット」を考慮すると、 トータルでは定期券が優位に立つ場合もあります。 このような場合、どちらを買うべきかは、買う人の判断にゆだねられます。

「週3回」なら定期券?回数券?

買い替えの手間

 回数券にない、定期券だけのメリットとしては、 一度買ってしまえばあとは期限切れまで何もしなくていい、 ということがあげられます。
 たとえば、上記の東京〜横浜間を週3回利用するときに、 あえて回数券ではなく定期券(6カ月)を買うと、 半年=6カ月で回数券との差額は約1200円。つまり1200円高くつきます。
 が、回数券だと、この間に14冊購入しなくてはなりません。 一度にまとめて買えば、 買う手間は理論的には3カ月に一度まで減らすことができますが、 かさばりますし、定期券に比べるとやはり不便です。
 半年で1200円という金額は、定期券の「便利さを買う」には妥当な金額でしょうか?  一度考えてみる価値はあるでしょう。

他区間乗車への補助

 また、定期券は途中下車が自由なうえ、何度乗ってもねだんは当然変わりません。 ですから、他区間を乗車するときの補助として使えることがあります。
 たとえば、東京〜横浜の定期券を持っていれば、 東京から川崎に行くときには新たに乗車券を買わずに済みます。 東京から大船に行くときにも、新たに支払う運賃は横浜〜大船だけで済みます。
 回数券でも、いつもとちがう区間に乗る際に応用することはできますが、 回数券は使えば減ってしまうので、必ず得をするとは限りません。 たとえば東京から大船へ行くのに東京〜横浜の回数券を使うのは若干の得になりますが、 東京から川崎へ行くのに東京〜横浜の回数券を使うのは、 回数券を余しているのでなければ明らかに損です。
 半年1200円という差額は、 この「他区間にも使える柔軟性」に見合うものでしょうか?  これも一度考えてみる価値はあるでしょう。

 なお、上記で「半年1200円」という差額がひんぱんに登場していますが、 この「1200円」はあくまでJRの東京〜横浜間に固有の値であり、 会社や乗車距離に応じて変わります。
 定期券の距離が長くなれば、 他区間乗車に関するメリットもそれだけ大きくなるので、 回数券との差額が広がってもまだ納得できます。 が、単に回数券の買い替えの手間を省くためだけに定期券にするという選択は、 距離が長くなるにつれてとりにくくなるでしょう。

新幹線なら週3回でも

 最後に、ちょっと特殊な例として、新幹線を週3往復程度利用する人は、 回数券より在来線の定期券を買ったほうが安くつくかも、という話です。
 新幹線に定期券で乗るには、 新幹線の自由席に乗り放題の新幹線定期券「FREX」を買うか、 並行する在来線の定期券を買って新幹線に乗るたびに特急券を買い足すか、 2通りの方法があります。ここで注目するのは後者です。
 後者の方法で新幹線に乗る人のために、 主に短距離区間で「定期券用新幹線回数券」というものが売られています。 特急券だけの(乗車券を含まない)回数券で、 名前のとおり、定期券を持っていないと利用できません。 つまり、在来線の普通乗車券や回数券と併用することはできません。
 この「定期券用新幹線回数券」は、 区間によってはまったく割引がない一方、区間によっては非常に割安のため、 運賃だけ比較すると回数券のほうが安くつく「週3往復」であっても、 料金まで含めると定期券のほうが割安、ということがあり得ます。 おおまかな傾向としては、新幹線に1駅間だけ乗る場合(大宮・小山、 新横浜・小田原など)は安くなく、2駅間以上乗ると割安なようです。

 定期券利用が割安な例として「東京・小山」を挙げます。 この区間の通常の自由席特急料金は1990円ですが、 定期券用の回数券だと1枚あたり1150円で、実に4割引以上です。 このため、週2回(6カ月で52回)利用で比較しても、 在来線回数券+特急券の場合370516円、 在来線定期券+定期券用新幹線回数券の場合328170円と、 定期券利用のほうが安くつきます。 実は、これとは別に「乗車券と自由席特急券がセットになった回数券」もあり、 これだと324800円で済むので、週2回ではわずかに及ばないのですが、 週3回なら明らかに定期券のほうが割安です。
 以上のように、新幹線を週に2往復、3往復と利用する人は、 定期券利用を検討する価値があります。 (繰り返しますが、区間によってはまったく安くならないので注意してください。)

 なお、東北・上越新幹線の Suica エリア内では、在来線の Suica 定期券を買って特急料金分をチャージし、新幹線の改札機にタッチすると、 自動的に上記の「定期券用新幹線回数券の料金」が適用されます(その代わり、 「定期券用回数券」との併用はできません)。回数券を買う代わりに Suica にチャージすることになるので、 使い勝手は若干ちがいますが、料金面では「磁気定期券+定期券用回数券」と同じで、 上記の比較がそのまま当てはまります(有効期限がないので、 あまりひんぱんに使わない人にとっては Suica のほうが得です)。


定期券、どうせ買うなら…

 さて、定期券を買うことになったとしましょう。
 が、定期券、たとえ短距離でもそれなりに大きな買い物です。 一般の高額商品のように値切るのは無理ですが、 ちょっと工夫すれば、ねだんのわりにいいものが買えるという可能性はあります。 また、定期券を買うこと自体にも工夫の余地はあります。

新規なら7日前、継続なら14日前から

 まず、定期券はいつから買えるかという話。

 それまで定期券を利用していなくて、新たに定期券を買う場合、 従来は使用開始の前日にならないと買えませんでした。 実は「使用開始の前日が(その人の通う会社や学校の)休日にあたる場合、 休日の前日に購入できる」という規定があったので、 休みをはさむ場合には2、3日前から買えたのですが、 ともかくそれぐらいの範囲でした。
 しかし、今では多くの会社が「新規でも7日前から」という体制をとっています。 つまり、新規でも使用開始日の1週間前から買えるわけです。 年度始めは定期券の売り場がけっこう混みますので、 たとえば日曜日、町に出かけたときについでに買っていく、 なんてこともやりやすくなりました。

 いっぽう、それまで持っていた定期券と同じものを買って、 いわば有効期限の更新を行う場合(いわゆる「継続」扱い)には、 新たな定期券の有効開始日の14日前から買うことができます。 こちらはもっと便利ですね。

継続なら迷わず自動券売機

 同じ区間の定期を継続して買うなら、自動券売機が断然おすすめです。 大手ではほとんどの会社が、継続の定期券が買える自動券売機を設置しています。

 ふつう、定期券を買うとなると、営業時間の限られている定期券売り場に出向き、 用紙に記入して、さらに4月・10月初旬などの混雑期だとそれなりに待たされて、 ようやく買えます。
 が、自動券売機を利用すれば、駅の開いている時間帯ならほぼいつでも、 今の定期券を入れるだけで新しいものが発行されるのです。会社によっては、 定期券発売窓口の設置されていない小さな駅を中心にこれを設置している例もあるので、 より身近な駅で買えるようになる、ということもあります。

 ただ、これを利用するには、ふつう、 その自動券売機を設置している会社で買った定期券を持っていなくてはなりません。 2社以上にまたがる定期の場合は要注意です。
 また、初めて自動券売機を利用する場合、 名前や年齢が磁気情報として入力されていないことがあり、 その場合には、氏名や年齢などを自動券売機に入力するという、 少々めんどうな操作が一度だけ必要になることがあります。
 さらに、通学定期券は大きな制約を受ける場合があります。具体的には、 来年度にまたがる定期券は買えない、他社にまたがる定期券は買えない、 などの制約であることが多いようです。そもそも、 通学定期自体を自動券売機で扱っていないという社もあるようです。 (が、この制約は最近だいぶ緩和されつつあります。)

 このような問題はあるものの、通勤定期の場合は、いったん軌道に乗せてしまえば、 あとはめんどうな操作なしに便利さを半永久的に享受できます。

遠くの駅まで買っておこう

 定期券は、当然、長距離になるほど高くなります。 が、特に私鉄では、距離が1.2倍になったから運賃も1.2倍、 ということはあまりありません。 多くの場合には、ちょっと運賃を追加して支払うだけで、 だいぶ長距離の定期券が手に入る可能性が高いのです。
 ですから、もし定期券を買うなら、1駅先、 2駅先まで買ってみたらどうか、と考えてみましょう。 休日に定期券の区間外まで出かけるとき、 定期券が何駅か先まで買ってあれば、別に支払う運賃がちょっと浮く、 なんてことがあるかもしれません。 特に、定期券の端の駅が「あと1駅で他社線への乗りかえ駅」 「あと1駅でターミナル駅」などという場合には要チェックでしょう。

 「定期券の区間外なんてまず乗らないから、 そこにわざわざ余計なお金をつぎ込むつもりはない」という人も、 同じねだんで数駅先まで買えないか、 ということはチェックしてみる価値があるでしょう。
 定期券の運賃の区分は普通乗車券より細かいことが多く、 たいていは1駅ごとにねだんが上がるのですが、 「1駅先まで買っても同額」ということもあります。 今持っている定期と同じねだんで、1駅先までの定期が買えるとしたら、 ちょっともったいない気がしますよね。調べてみる価値はあります。

選べるならIC定期券

 JR東日本の首都圏・仙台近郊では「Suica」、 首都圏の私鉄・地下鉄では「PASMO」、 JR西日本の近畿圏では「ICOCA」など、 ICカードを用いた定期券が徐々に広がりつつあります。 利用できるなら積極的に利用するといいでしょう。
 ICカードを利用した定期券は、ほとんどが紛失しても再発行が可能です。 また、乗り越し精算なども便利なことがあります。 初回発行時にデポジット(預り金)を支払う場合もありますが、 紛失したときの保険料としては十分安いといえるでしょう。
 ただ、ICカード定期券は、 ほとんどの場合に2枚同時に使うことができません。 たとえば、通勤経路が複雑で1枚のICカードに収まらないとき、 連絡改札機を通れなかったり、 同じ定期入れに2枚の定期を入れているとエラーが出たり、 いろいろ面倒なことが起きます。 ICカードを1枚にまとめきれない場合には、磁気定期券のほうが無難です。

クレジットカードで定期券

 定期券は高額な買い物ですから、多額の現金を持ち歩かないという意味で、 またクレジットカード会社の利用特典を得るという意味で、 クレジットカードでの購入ができるといいな、と思う人も多いでしょう。
 が、鉄道会社で使えるクレジットカードは、 JR以外ではかなり限定されている場合が多いのが現状です。 具体的には、JR以外のほとんどの鉄道会社では、 自社ブランドのクレジットカードのみ使用できる、という状態のようです。
 それらのカードを持っていれば迷わず使うとして (前述の自動券売機でも使える場合が多くなっています)、 持っていない場合はあきらめるしかありません。
 いっぽうJR各社では、主なみどりの窓口で一般のクレジットカードが使えます。 連絡定期券は不可という場合もあるようですが、 徐々に制限が緩くなっています(JR東日本は2007年3月からOK)。 2社連絡の定期券を持っている場合、どちらの会社で購入するか、 持っているクレジットカードで選ぶのもいいでしょう。

商品券で定期券…?

 デパートの商品券で定期券が買える…にわかには信じがたい話ですが、 実は買える会社があるのです。
 といっても、それほど取り扱っている会社は多くありません。 私の知る限りでは、小田急と東急が該当します。 この2社は、それぞれ小田急百貨店、 東急百貨店の商品券(小田急についてはギフトカードも可) で定期券が購入できるとのことです。
 このうち小田急については、何を思ったのか、 2000年ごろに取扱範囲がぐんと広がったようです。 小さなの駅の窓口にも「商品券が使えます」という表示が出ています。 おそらく特急券や回数券も買えるのでしょう。
 商品券なら、いわゆる「金券ショップ」で、 額面より若干安く購入することができますから、 定期券を通常より安く買えることになります。

分割購入って?

 それから、思い出したように週刊誌などではやる、定期券の「分割購入」。
 これについては、 普通乗車券なども含めた「乗車券の分割」 のページを参照してください。


長期の実習に通学定期?

 最後に、あまり一般的ではない話をメモ程度に残しておきます。
 私の通っていた学校には工場などに出向いての実地演習があり、 その期間は、人によっては最大1カ月近くにもなりました。
 となると、 実習先までの通学定期が買えないだろうか、と考えるのが自然(?)です。
 が、関係の規程を当たってみたところ、 ちょっと通学定期を出してもらうには無理があるようです。 というのは、実習の場合に通学定期を出す必要条件が

  1. 実習は、履修単位の認定を行うもの(単位の認定は行わないが、 必修又は卒業要件とするものを含む。)であること。
  2. 在籍する学校の指導教員によつて現地指導を受けるものであること。
  3. 実習箇所から報酬その他交通費に相当する手当の支給を受けないものであること。
  4. 実習生がおおむね1箇月程度同一箇所で実習を行うものであること。

のすべてを満たすことであるからです (学校及び救護施設指定取扱基準規程第10条第2項による)。
 私の場合、2. をクリアできないのであきらめました。

 ただ、かりに上記の条件を全部クリアできたとしても、 実際に通学定期券を買うのは容易ではない可能性があります。
 実習先で聞いたのですが、とある大学院の学生で、 学校以外のところが実質的な研究室になっている場合に、 通学定期を出してもらおうとしたら、 JRとの交渉にえらく時間がかかったということです。
 1カ月程度の実習では、交渉が長引けば買えないのと同じことになります。



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最終更新: 2007年 3月24日
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