PROJECT LOP News Vol. 3
乗車券を「読む」
− 最長片道きっぷ 現物を公開 −

 意外なまでにすんなり買えてしまった最長片道きっぷ。 さて、ほんとうに正しくできあがっているのだろうか?  実は、この序文を書いている時点では筆者も正しいかどうかを確認していない。 読者のみなさんといっしょに、最長片道きっぷを「読んで」みることにする。


「実物」の形状

 最長片道きっぷを実際に買う前から、「小さな紙には経路が書ききれないから、 別紙があるな」とは思っていた。前例をいくつか見たことがあるが、 そのいずれも、経路は別紙に書かれていた。
 その予想どおり、受け取った乗車券はB5サイズだった。 もちろん、乗車券本体は通常の出札補充券(健康保険証ほどのサイズ)だったが、 B5の別紙が2枚ついていて、それらがステープラーで綴じられていた。

 ただ、あとで聞いたところによると、 ある人が買った最長片道きっぷには別紙がなく、 全経路が乗車券本体に記してあったという。 経路欄は決して広くないから、かなり読みにくそうだ。 実際、旅行の途中で(途中下車印が増えて)自身にも判読不可能になったとか。
 さらに、その後いくつかの例をあたってみたところ、 きっぷの裏面を経路欄として使った例がけっこうあることを発見。 宮脇俊三氏の例も裏面使用だった(私の覚えちがい)。

 Vol. 1 で「電話番号を連続用紙の切れ端に記してきた」と書いたが、 今回もそれに似た趣があった。 経路を書くための「別紙専用用紙」があるわけではないので、 適当な用紙を使うことになるわけだが、 実際に使われたのは団体乗車券の別紙として利用される紙だったのだ。 まぁ「乗車券の別紙」という点では同じなのだが、 「裏面のご注意をご覧ください」と書かれていて、 裏面を見ると「これは団体乗車券の別紙です」などと、 最長片道きっぷとは関係のないことが書いてあるのがちょっと妙。


現物はこんなです

 え? 能書きはいいから早く現物を見せろって? はいはい、分かりました。 本体と別紙2枚、全部スキャンしましたのでどうぞ。

乗車券本体 ← 乗車券本体
これに別紙1別紙2がつく。

おことわり

 このサイズでは偽造は不可能と思われますが、いちおう偽造防止のため、 グレースケールで取り込み、さらに加工をしています。


本体に関して

 収受または変更区間「稚内→肥前山口」、59日間有効、領収額75090円。 すべて事前の計算どおりで気分がいい。
 ただ、運賃の計算根拠である距離が示されていないので、 そこに若干の不安を覚えなくもない。運賃計算キロは11925.9kmのはずだが、 11920.1kmから11960.0kmまでは同じ運賃なので、 ひょっとすると距離はちがっているかもしれないのだ。 もっとも、自らの計算結果よりも距離が長くなっていることはないと思われるので、 「運賃は一致したが距離はちがっている」という可能性はかなり小さい。

 それにしても、「59日間有効」というのは単純に笑える。 有効期間の長い乗車券の代表格だった普通周遊券でも1カ月だったから、 私がこれまでに手にした乗車券の中で文句なしに一番有効日数が長いものになる。
 ちなみに、往復乗車券だと有効日数は片道の2倍だから、 たとえば今回のルートの最後を1駅ぶん短縮して「最長往復きっぷ」 (かどうか厳密には分からないけど)を作ると、 有効日数118日というのができることになる。 夏休みに旅行を始めてゴールが冬休み、ということも可能だ。:-)


別紙について

経路表記

 別紙に記された経路を書き下すと以下のようになる。

宗谷本線−石北本線−釧網本線−根室本線−富良野線−岩見沢−室蘭本線−千歳線− 函館本線−津軽海峡線−東北本線−花輪線−奥羽本線−川部−五能線−東能代− 奥羽本線−羽越本線−米坂線−奥羽本線−田沢湖線−山田線−釜石線−東北本線− 大船渡線−気仙沼線−石巻線−陸羽東線−東北新幹線−福島−東北本線−岩沼− 常磐線−磐越東線−磐越西線−信越本線−長岡−上越新幹線−越後線−柏崎− 信越本線−上越線−飯山線−信越本線−北陸本線−大糸線−篠ノ井線−信越本線− 長野−北陸新幹線−上越新幹線−越後湯沢−上越線−両毛線−東北本線−水郡線− 常磐線−武蔵野線−南浦和−東北本線−赤羽−赤羽線−池袋−山手線−上野− 総武本線−両国−佐倉−成田線−松岸−総武本線−東金線−外房線−安房鴨川− 内房線−京葉線−中央本線−武蔵野線−武蔵浦和−与野本町−大宮−高崎線−八高線− 青梅線−南武線−東海道本線−品川−新川崎−鶴見−横浜−根岸線−東海道本線− 御殿場線−東海道本線−身延線−中央東線−横浜線−新横浜−新幹線−飯田線−辰野− 岡谷−塩尻−中央西線−東海道本線−関西本線−亀山−紀勢本線−和歌山線−桜井線− 関西本線−天王寺−京橋−片町線−柘植−草津線−湖西線−近江塩津−北陸本線− 米原−岐阜−高山本線−北陸本線−小浜線−舞鶴線−山陰本線−京都−新幹線− 西明石−山陽本線−東海道本線−福知山線−山陰本線−鳥取−因美線−東津山− 姫新線−山陽本線−赤穂線−東岡山−山陽本線−津山線−姫新線−新見−伯備線− 倉敷−山陽本線−福塩線−芸備線−備中神代−伯備線−山陰本線−三江線−三次− 芸備線−広島−新幹線−山口線−山陰本線−美祢線−山陽本線−鹿児島本線−小倉− 新幹線−篠栗線−香椎線−鹿児島本線−西小倉−日豊本線−吉都線−肥薩線−隼人− 日豊本線−鹿児島本線−久大本線−夜明−日田彦山線−田川後藤寺−後藤寺線− 筑豊本線−原田−長崎本線−佐世保線−大村線−諫早−長崎本線 以下余白

 以下、別にあらさがしをして楽しむわけではないが、 気付いた点をいくつか指摘しておく。 逆に言うと顕著な誤りは見当たらないということでもある。

経路表記に駅名が入るのはどんなとき?

 経路の表記に駅名の入る基準がいま一つ明確でないように思う。
 主に、「路線A」と「路線B」が2つ以上の接続駅を持っているときに、 どの接続駅でAからBに移るのかを明確にするために、 経由する接続駅名を記してあるようだが、たとえば東海道→御殿場→東海道のように、 省略されている箇所もある(似たような事情の赤穂線は「東岡山」のみ記載、 五能線は両端を記載)。
 また、「埼京線」「総武支線(御茶ノ水・錦糸町)」など、 路線名が怪しげ(?)なところで、 路線名を記す代わりに駅名を記している例も見受けられる。 たとえばいわゆる「埼京線」は「武蔵浦和−与野本町−大宮」と逃げてある。
 さらに、何を思ったか、 路線名が「あやしくない」のに、路線名の代わりに駅名を記載しているところもある。 たとえば「片町線−柘植−草津線」「山手線−上野−総武本線」など。
 そのほか、「関西本線−亀山−紀勢本線」「山陰本線−鳥取−因美線」など、 冗長な駅名もいくつか見られる。

特例適用をひそかに主張?

 新在同一視がらみで問題の博多近辺だが、 表記は「小倉−新幹線−篠栗線」とあっさり。 「新幹線吉塚」・博多・吉塚間は運賃計算経路に含まれていない、 ということを主張するため、「博多」「鹿児島本線」と書かなかったのだろうか。

 また、旅客規則70条により最短経路での計算を余儀なくされた天王寺・京橋間だが、 こちらは「関西本線−天王寺−京橋−片町線」となっている。 あえて大阪環状線という路線名を書かなかったのは、「最短経路で計算する区間は、 券面に経路を指定しない」という旅客規則70条に忠実なのだろうと思いたい。 天王寺、京橋という、70条適用区間の出入口をしっかり指定してあるあたりがニクい。

その他

 スキャン画像を見ると分かるが、「隼人」が「集人」になっている。:-)

 新在並行区間で新幹線を利用するように書かれているかどうかは、 原則として、現在の予定で新幹線に乗るかどうかを反映している。 ただ、どちら経由にしてあっても効力に影響のない場合で、 新幹線経由であることを明記することで文字数が増える場合には、 書く手間を考慮して在来線経由で申請した(たとえば花巻・北上・一ノ関間)。 まぁ、東北・上越新幹線では、新在別線扱いでない限り「新幹線」とは明記しないか。



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最終更新: 2000年 7月16日
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