最近、ツアーでありながら観光の要素がない、
路線バス風のバスツアー(以下、ツアーバス)が増えています。
広告を見るだけではあまりにも路線バスに似通っているので、利用者の中にも、
路線バスとツアーバスの区別がついていない人が目立つようになってきました。
しかし本来、路線バスとツアーバスはかなり異なる性質の商品で、
路線バスのつもりでツアーバスを利用すると、
思わぬ失敗をすることがあります。
このページでは、路線バスと対比しながらツアーバスの特徴を説明し、
読者に「納得した上で路線バスとツアーバスを使い分けてもらう」ことを目標としています。
まず最初に、路線バスとツアーバスのちがいを表形式で比較してみます。 以下で気になった項目があれば、より詳細な説明を読んでみてください。
路線バス | ツアーバス | |
---|---|---|
商品の内容 | バスによる移動そのもの | バスを移動手段とする旅行 (通常の観光バスツアーから観光を抜き、さらに片道にしたもの) |
見分け方 | 市販の時刻表に載っている 「バスどこなび」に載っている 地元の路線バス会社が運行している |
パンフレット末尾に「募集型企画旅行」の文言がある 旅行会社がパンフレットを発行している ※ 貸切バス会社の旅行部門が募集することもある |
旅行者は誰と契約を結ぶか | バス会社 | ツアーを企画・実施する旅行会社 ※ 商品を購入した旅行会社とは限らない ※ バス会社とは直接契約していない |
予約・支払い場所 | バス会社の窓口・電話予約センターが最有力 みどりの窓口(JRバスの場合) 主要な旅行会社(運賃のほかに手数料が必要な場合あり) Web・コンビニエンスストアの端末 |
電話・Web などでの通販主体 一部旅行会社の店頭(大手ではあまり扱わない) 金券ショップ |
予約期限 | 多くの場合、発車間際まで (少なくとも当日、営業所が閉まるまで) |
ツアーによるが、当日〜数日前 |
座席の選択 (窓側・通路側等) |
バス会社の窓口なら選べる場合が多い (通常、乗車券に座席番号の表示あり) |
ほとんどの場合選べない (座席表はバス車内に掲示) |
きっぷの形態 | 通常は紙の乗車券 (一部会社でチケットレスサービスあり) |
「旅行代金を払った証明」がそのままツアー参加券になる場合が多い (料金収納票、支払い完了メールのハードコピーなど) |
便の変更 | 多くの会社では、1度なら可能 | ほとんどのツアーでは不可 (いったん払い戻して再購入) |
払い戻し | 多くの会社では、発車前までなら手数料一律100円 (コンビニ決済等、例外あり) 往復予約で片道利用後払い戻しの場合、たいてい割引の取消程度で済む (結果的に、片道運賃+αの出費で済む) |
ほとんどの場合、出発21日前までなら取消料無料 以後、20日前以降20%、当日出発前50%など 往復予約で片道利用後払い戻しの場合、1円も戻らないことが多い |
■ この項に関する詳細→「Part 1:予約・支払い編」
路線バス | ツアーバス | |
---|---|---|
使用されるバス | 乗車券を発行したバス会社、もしくは共同運行会社の所有する車両 | 企画・実施旅行会社の手配した貸切バス (日によってどの会社のバスが来るか異なる場合が多い) 参加人数によっては他社ツアー・路線バスへの振替あり ※ 3列シート車は路線バスの中古が多い |
女性専用席 | 路線による (主要路線では女性専用車もあり) 配席上の配慮は路線によるが、ないと思ったほうが無難 (予約時に名前を登録しない路線ではそもそも無理) |
ツアーによる (全く配慮なし、異性と隣り合わせにしない、女性専用エリア、女性専用車…) ※ 追加料金で対応するツアーもある |
シート | 多くの場合横3列・縦10列 競争の激しい区間の場合、横4列では大幅な値引き |
多くの場合横4列・縦11列 一部ツアーで横3列、あるいは縦10列以下のバスを選べるが、割増料金要 |
トイレ | ほとんどの場合、ある | ほとんどの場合、ない (途中休憩で対応) |
■ この項に関する詳細→「Part 2:車両編」
路線バス | ツアーバス | |
---|---|---|
バス乗り場 | バス停留所 最低でも時刻表が掲示されている ターミナルでは待合室あり |
路上や駐車場など、指定された集合場所 ※ 通常、専用のバス停はない 集合場所が路上の場合、通常、時刻表などの固定された目印はない 待合室はまずない |
集合・発車時刻 | 乗客は発車時刻までに各自バス停へ 通常、遅刻者を待たず定時発車 (乗客の氏名・連絡先を把握していない路線もある) |
通常、集合時刻を出発時刻20分程度前に設定 全員の受付を確認するまで発車せず (氏名・連絡先をすべて把握しているため) 遅刻者を待つことによる遅延あり (始発で手間取った場合、途中乗車地からの客は路上で待つことになる) |
受付体制 | バス運転士に乗車券を見せることで受付完了 ターミナルの場合、地上係員の誘導もある |
通常、地上スタッフに申告し名簿と照合 (一部ツアーでは地上スタッフなしで運転士が受付) ※ バス到着までの間、係員不在の可能性 地上スタッフから、どのバスに乗るかを案内される(バスに行き先表示なし) |
付加サービス | 格安便を除き毛布程度はあることが多い | 特記がない場合には何もないのがふつう |
途中経路 | 固定 (近道・回り道等は原則不可) |
自由 (予定した経由地を一部通らなくてもOK) 乗り継ぎもあり得る |
■ この項に関する詳細→「Part 3:乗車当日編」
このページを編集するにあたり、ツアーバス利用者の感想を
Web 上で集めてみましたが、
思わず「価格相応」という言葉を教えてあげたくなる人が多くいました。
路線バスも含め、長距離バスは「他の交通機関に劣る点(所要時間、
車内の広さなど)はあるものの、安価なので成り立っている」というのが一般的です。
最近は価格競争で「安価」という部分に磨きがかかっていますが、
安さのために何かが犠牲になっていると考えるのがふつうです。
しかし、そのことを理解せずに、価格だけに注目して格安のバスを選び、
実際に乗ってみて「こんなサービスがあるか!」と怒っている人が意外に多くいます。
以下に、Web で目にした主な苦情をピックアップしてみました。
当然ながら、以下の苦情はすべての路線バス・ツアーに当てはまるものではありません。