一部の節を「折りたたむ」機構を試験的に導入しています。 詳細については「折りたたみ機構の試験導入について」をお読みください。
ふつう「高速バス」と呼ばれているものは、
毎日の通勤・通学に利用されているバスと同じ性質の商品で、
「路線バス」というカテゴリに属します。
路線バスは、同じ経路を定期的に運行する「乗り物」それ自体が商品で、
(貸切でない)鉄道や飛行機と似たようなものです。
いっぽう、このページで取り上げているツアーバスは、
あくまでも「ツアー=旅行」が商品であり、
バスはその旅行を構成する要素の1つにすぎません。
新聞の夕刊によく広告が載っているようなパッケージツアーと同じカテゴリの商品です。
「東京発、関西名所めぐり」といったツアーから「名所めぐり」の部分を除き、
さらに片道だけで利用できるようにしたものと考えてください。
高速バスとツアーバスは、ある程度の予備知識がないと見分けがつきませんが、
両者を混同したまま利用するのは、
いろいろな意味で危険です(不利益を被る可能性があります)。
そこで、両者を手っ取り早く見分ける方法をいくつか考えてみました。
以下、この文書を読み進むにつれて両者は別物であると実感でき、
おのずと判別できるようになるはずですが、
見分ける自信のない人は、まずは以下のような方法で判別してみてください。
いきなり「契約」などとややこしそうな話ですが、
重要なことなので書いておきます。
路線バスでは、バス会社から乗車券を買うので、バス会社と直接契約を結びます。
「直接契約した相手」の所有するバスに乗るわけです。
いっぽうツアーバスでは、
旅行者はツアーを企画・実施する旅行会社と契約を結びます。
しかし旅行会社は一般的にバスを持っていないので、
旅行者が実際に乗るのは「旅行会社がチャーターした貸切バス」です。
つまり、ツアーバスの場合、
旅行者とバス会社は直接契約を結んでいません。
そのため、バス乗車中に何かあった場合には、
(第一義的には)バス会社ではなく旅行会社に責任を負ってもらうことになります。
また、旅行者は旅行会社を選ぶことはできても、バス会社を選ぶことはできません。
なお、旅行会社の見極めに関しては、この文書の末尾にヒントを載せています。
路線バスでもツアーバスでも同じことですが、
「旅行を申し込んだ窓口」と「契約相手」とが同一とは限りません。
ツアーバスだと「申し込んだ窓口」も「契約相手」も旅行会社ということがあり、
特に混同しやすいといえます。
たとえば、最近ではコンビニエンスストアでも路線バスの乗車券を購入できますが、
当然、コンビニエンスストアがバスを運行しているわけではありません。
かりに路線バスの運転士の応対が悪かったとして、
乗車券を購入したコンビニエンスストアに「何とかしろ」と言うのはお門違いです。
ツアーバスでも似たようなことがあります。
A旅行社の窓口で「B旅行社の企画・実施するツアーバス」を申し込むようなケースです。
この場合、ツアーに対して苦情を申し立てるとすれば、相手はB旅行社であり、
単に申し込みを取り次いだA旅行社を相手にするのはお門違いです(ただ、
サービスの一環として、苦情をB旅行社に取り次いでくれる可能性はあります)。
ツアーバスの場合には、事前に契約相手をしっかりと確認しましょう。
そのためには、パンフレットや旅行条件書などを見て、
「このツアーは○○社が企画・募集する旅行です」「旅行企画・実施
○○社」のような記述を探してください。
ここに出てくる「○○社」が真の契約相手です。
(パンフレットの末尾に捺してある「店名のゴム印」とは必ずしも一致しません!)
「申し込み先≠契約相手」の典型例が楽天トラベルです。
楽天トラベルでは最近、
各社が企画・実施するツアーバスを同一のサイトで販売していますが、
楽天トラベルは取り次ぎをしているだけです。
実店舗に例えると、「楽天トラベル」という旅行代理店があって、
そこに各社のツアーバスのパンフレットが並べてあり、
予約・購入もできる、ということです。
楽天トラベル宛に苦情なり意見なりを書き込めば、
ツアーを企画・実施する旅行会社に届くようなシステムにはなっていますが、
契約はあくまでも「旅行者」と「旅行会社」との間で結ばれています。
「楽天トラベル」は取り次ぐだけ、
そして「貸切バス会社」は旅行会社から頼まれてバスを走らせているだけです。
過去の例からいって、もし万が一、
旅行代金を支払ったあとに旅行会社がつぶれた場合、
旅行は中止、代金もほとんど戻らないという可能性があります。
こんな経済状況ですから、路線バスを運行する会社もつぶれる可能性はあります。
しかし路線バスは公共性が高いうえ、バス会社は自前の社員でバスを運行しているので、
ほとんどの場合、経営が破綻しても何らかの形で当面の運行は継続されます。
旅行会社の「万が一」のときに旅行者を保護するための制度も用意されてはいます。
ツアーを企画・実施する旅行会社は必ず、
「会社がつぶれたときの弁済用資金」を社外に供託・納付しなければならず、
もし旅行会社がつぶれた場合、旅行者はその弁済用資金から、
他の債権者(観光バス会社やホテルなど)に優先して弁済を受けられることになっています。
ただし当然、弁済の総額には上限があるので、
債務が膨大であれば全額は返ってきません。
おそらく、それぞれの旅行者が支払った旅行代金に応じて、
総弁済額を比例配分ということになるでしょう。
制度の詳細は全国旅行業協会の「弁済業務保証金制度について」のページを参照してください。
路線バスの場合、
予約・購入場所としてはバス会社の窓口や電話予約センターが一般的です。
これに加え、JRバスならたいてい駅の「みどりの窓口」でも乗車券を購入できますし、
たいていの高速バスは主要な旅行会社でも乗車券を購入できます(ただし、
旅行会社や路線によっては手数料がかかります)。また、最近では Web
ページやコンビニエンスストアでも購入できる例が増えています。
一方のツアーバスは、現在のところ、電話や Web
での通販が主流です。
ツアーによっては市中の旅行会社でも申し込めるものがありますが、
比較的少数で、また、大手旅行会社ではあまり扱っていないようです。
また、一部のツアーバスでは「金券ショップ」でも取り扱っていますが、
これはちょっと妙です(コラム参照)。
金券ショップで扱う「夜行バス」というと、たいていはツアーバスなのですが、 中には路線バスの回数券をばら売りしている店もあります。 混同しないよう注意してください。
ツアーバスを取り扱っている金券ショップでは、
その場でツアーを申し込むのではなく、
いったん「優待券」を介することが多いようです。
旅行者は金券ショップで「旅行優待券」なるものを購入して店を離れ、
ツアーを企画・実施する旅行会社に電話をかけ、
「○月×日出発のツアーを、旅行優待券利用で」と告げて予約します。
あとは当日、集合場所で優待券を呈示しておしまいです。
つまり、金券ショップは旅行代金の回収しかしていないわけです。
(店によっては、予約まで代行してくれるところもあるかもしれません。)
それにしても、正規の旅行代金を払っているのに「優待券」とは妙ですよね。
何が「優待」なんでしょう。
旅行会社が株主向けに発行している旅行優待券をばら売りしているとも思えません
(東京・大阪間のツアーに使ってぴったりお釣りが出ない株主優待券って何?)。
とある旅行会社の旅行条件書には、
この優待券は「旅行代金の支払い手段の1つ」と書かれていますので、
その旅行会社専用の金券という位置づけでしょうか?
(「バス会社の株主優待券」とかんちがいしている人もたまにいますが、
それは100%ちがいます。)
以下は完全な邪推ですが、
「タダで旅行のできる優待券をだれかが金券ショップに持ち込んだので、
それを売っている」と主張すれば、
資格者なしで旅行代理店相当の業務を合法的に行えるかもしれません。
もしそういう店で優待券を買ったとして、旅行会社に万が一のことがあったら、
優待券を買った人は法的に債権者とみなされるのか、いや、
通常の旅行キャンセル時にも代金はどこから戻ってくるのか…など、
心配性の私は夜も眠れない(嘘)のです。
夜行の路線バスの場合、原則として予約が必要ですが、
当日、乗り場に行って空席があれば、たいていは乗ることができます。
少なくとも、バス乗り場の営業所が開いているうちは大丈夫です。
一方のツアーバスでは、
予約期限が路線バスより早い場合(出発前日まで、
出発当日午前までなど)が多くなっています。
また、予約なしで乗り場に行って乗せてもらう「飛び乗り」も、
できないと思ったほうが無難です。
前述のとおり、ツアーバスでは「旅行者」と「旅行会社」が契約を結ぶわけですが、
バスの乗り場にはバスの運転士(≠旅行会社の人)しかいない、
という可能性も大いにあります。
多くの路線バスでは、
乗車券購入時に「窓側」「通路側」など座席の選択ができます。
一部には「座席を選択できない購入方法」もありますが、
バス会社の予約センターなど、バス会社に近いチャネルなら十中八九OKです。
一方のツアーバスですが、座席の選択は、ほとんどの場合できません。
一部のツアーでは予約時に指定ができたり、
「確約はしませんが希望は聞きます」と言ってくれたりしますが、
これらは例外的な存在です。
路線バスの場合、乗車券を買った時点で座席番号が判明するのがふつうですが、 ツアーバスの場合、実際にバスに乗り込んで座席表を見るまで分からないのがふつうです。 「絶対に窓側でなければダメ」という人はツアーバスを避けるのが無難です。
路線バスの場合、ふつうは乗車券が発行され、乗車時にそれを呈示します。
最近になって「コンビニエンスストアの料金収納票で乗車可」
「携帯電話に表示」などチケットレスサービスも始まっていますが、
まだそれほど普及していません。
一方のツアーバスではチケットレスが主流で、
旅行会社が「ツアー参加券」を発行することはそれほど多くありません。
といっても、乗り場で「予約した本人であること」の確認をとる必要はあるので、
銀行振込などで代金を支払った場合にはその明細書を呈示、
メールで支払い完了通知を送った場合にはそれを印刷したものを呈示…など、
各社とも余計なコストをかけない工夫をしています。
路線バスでは、便の変更は「出発前なら1回に限り可能」というのがふつうで、
この場合、手数料はかかりません。
一方のツアーバスでは、
出発日や目的地などの変更はできないのがふつうです。
どうしても変更したければ、いったん取り消して再度申し込むことになりますが、
この場合、取消料のかかる可能性があります(後述)。
路線バスの場合、
出発前なら100円程度の手数料で払い戻しが可能、というのが一般的です。
一方のツアーバスでは、ほとんどの場合、
出発20日前以降は20〜100%の取消手数料が必要です。
具体的には、21日前までなら取消料は無料ですが、
20日前以降は20%、7日前以降は30%、前日なら40%、当日(営業時間内)だと50%、
それを過ぎると100%(つまり返金なし)、というのが一般的です。
また、これとは別に、
通販の場合には返金時の振込手数料をとられる場合があります。
予定変更の可能性があるなら、ツアーバスを利用しないのが無難です。
路線バスでも、
コンビニエンスストアなど一部のチャネルで乗車券を購入した場合には、
「払い戻しが面倒・不利」ということがあります。
たとえば JTB HTA
扱いのコンビニ決済だと、
手元にある「きっぷ」を旅行会社に郵送して銀行振込で返金(手数料は自分持ち)、
という手続きが必要です。
また、便の変更は不可、通常+525円の手数料が必要…など、不利な点が多くあります。
路線バス、ツアーバスとも、たいていのコースには往復割引が設定されています。 しかし、往復で購入し、片道だけ使ったところでもう片道をキャンセルする場合、 いくら払い戻されるかは両者の間で大きく異なる可能性があります。 (私は路線バス、ツアーバスともに一部の会社の実例しか知らないので、 各社の具体的な取り扱いについては読者が個別に確認してください。 この節の目的は情報提供というより、 「往復割引を使う前には確認したほうがいいよ」という注意喚起です。)
路線バスの場合、往復乗車券を買って片道を使ったあと、 残りの片道を(予約した便が出発するまでに)払い戻す場合、 往復割引は取り消されるものの、片道分が払い戻されるのが一般的と思われます。 たとえば片道6000円、往復10000円の場合、4000円が返ってきます(実際には、 このほかに100円〜数百円程度の手数料も引かれます)。
いっぽう、ツアーバスの場合、往復で申し込み、
片道使ったところで残りをキャンセルすると、
まったく返金されない可能性があります。
というのは、ツアーバスを往復で申し込むと、
「往路出発から復路到着までが1つのツアー」という扱いになる可能性があるからです。
たとえば、行きは東京10月1日発、
帰りは大阪10月3日発の夜行ツアーバスを往復で申し込んだとすると、
会社によってはこれを「東京10月1日発、3泊4日(うち車中泊2日、
残り1泊ホテルなし)の大阪往復ツアー」とみなします。
この場合、大阪に着いてから「やっぱり帰りはいらない」と申告しても、
「ツアーの途中でその先を放棄しても払戻はできません」という返答が来ます。
添乗員がついて観光地を巡る一般的なパックツアーなら、観光の途中で「じゃ、
私はここで離脱しますので」と言っても全く返金されないのは感覚的に納得できます。
しかし、限りなくバス単体に近いツアーバスの場合、事前に心の準備をしておかないと、
思わず「返金しろよ」と言いたくなってしまうでしょう。
もし「帰りは怪しいな」と思ったら、多少高くても片道ずつ申し込むのが無難です。
ただ、わざわざ片道ずつ申し込むという自衛策をとったとしても、
乗車直前になるとツアーバスの取消料はもともと高いわけで、
取り戻せる金額は路線バス並みとはいきません。
前述のとおり、
ツアーバスの取消料は(一般的に)出発当日だと旅行代金の50%です。
しかも、取消の申告は旅行会社の営業時間内に行うのが原則で、
土日や祝日、あるいは深夜だと、
その日のうちに取消の申告ができない可能性もあります(バス乗り場に行って、
その場で取消を申告しても、受け付けてもらえるとは限りません)。
ツアーバスを利用するなら、乗車直前の予定変更は大損と覚悟しておきましょう。
最近、一部の旅行会社では「回数券」なるものを売っています。
読んで字のごとく、
事前に4回分なり6回分なりのツアーバス代金を払っておくと、
1回あたりの旅行代金が安くつくというものです。
これもまた、予定が変更となった場合にどういう扱いを受けるのか、
個人的にはかなり不安です。利用する前には十分に確認をとりましょう。
ツアー形式の夜行バスは、旅行業界や貸切バス業界の過当競争のせいか、
今まさに花盛りといった状況です。新規参入も多数あります。
こうした状況下で、安心して利用できるツアーを選ぶために、
約款に注目したチェックポイントをいくつか挙げます。
念のため補足すると、約款とは「いくつかの契約を定型的に処理するため、
あらかじめ作成した契約条項」(三省堂「大辞林 第二版」より)のことです。
たとえば鉄道会社の場合を考えます。
鉄道会社では、乗客一人一人と「運送契約」を結んでいます。
本来であれば、一人一人に対して個別に契約書を調え、その内容について協議のうえ、
双方合意できたところでそれを実行に移すべきところです。
が、実際上それは無理なので、
鉄道会社は「いくつかの契約を定型的に処理するため」に、
万人向けの契約条項(「この条件を了承してくれれば、誰とでも契約し、
運んであげます」という内容)を「あらかじめ作成し」、その内容を公開しています。
この「あらかじめ作成した契約条項」が約款、ということになります。
鉄道を利用する人は、(本来は)約款を熟読のうえ、
それを承諾したうえで「契約したい」という意志を示す(乗車券を買う)わけです。
旅行会社についても鉄道会社とまったく同じで、
各社が個別に「旅行業約款」を作り、公開しています。
旅行者はそれを事前に読むことが前提になっていて、
「旅行会社と契約した」ということは「約款の内容に同意した」ことになります。
まず、ツアー募集のパンフレットなり Web
サイトなりで「このバスがツアーであること」が明確になっているかどうか、
確認しましょう。
これまでさんざん書いてきたとおり、ツアーバスは路線バスとはちがい、
旅行会社が募集・企画・実施するバス旅行です(正式には「募集型企画旅行」といいます)。
そのことをパンフレットや Web
ページできちんと宣言している(たとえば、
旅行業約款にリンクが張られているかどうか)ことは基本中の基本です。
この点が明らかになっていないと、
今から乗ろうとしているバスが法令上どういうものなのか(路線バスかツアーバスか、
はたまた無許可運行のバスか)判断できません。
そして次に、その約款が新しいものかどうかを確認します。
通常、一利用者がちらっと見ただけで約款の新旧を判断するのは難しいのですが、
今は例外的に容易です。というのは2005年4月に旅行業法が大きく変わり、
これまで「主催旅行」と呼ばれていたもの(ツアーバスも含む)
が「募集型企画旅行」という名前に変わったからです。
これにともなって旅行業約款も変わっているので、
約款に「募集型企画旅行」という文言が出てくればひとまず安心です。
約款は旅行会社と利用者との契約書ですから、
これが誤っているというのは一大事です。しかし未だに、
第1条に堂々と「主催旅行」という文言が出てくる約款を載せている会社もあり、
法令遵守に対する意識の低さが容易に想像できます。
また、
旅行業協会の「標準旅行業約款」のページにリンクを張ったり、
自社ページに「標準旅行業約款」を載せたりして満足している会社もあります。
標準旅行業約款はあくまで「標準」、
言いかえれば各旅行会社の旅行業約款の「ひな形」「サンプル」です。
実際には、
この「サンプル」を一言一句変えずに自社の約款にしている会社が多いのですが、
たとえある会社の約款の文面が標準旅行業約款と一言一句違わないとしても、
「これが当社の約款です」と言って、
標準旅行業約款の載っている市販の本を見せられたら、
それはちょっとちがうだろうと思いませんか?
個人的には、こういう会社は約款を軽視しているのだろうなと思っています。
たとえばA社の Web ページにツアーバスが載っていたとしても、
企画・実施は別のB社である、という可能性があります。
誰が企画・実施しているのか明示されていない場合、約款を見ることになりますが、
約款の本文は長々と出てくるのに、それがA社の約款なのかB社の約款なのか、
かんじんの記載がないことが意外にあります。
(A社のページにあるんだからA社の約款に決まってる!という反論はもっともですが、
B社商品の代売をしている場合にきちんとB社の約款にリンクを張っている会社は少数です。)
これの最たる例が「標準旅行業約款へのリンク」を張っている会社ですね。
旅行商品を売るうえで「誰が企画・実施しているかを表示すること」は必須事項です。
これができていない会社は、ちょっと疑ってかかってもいいかもしれません。
約款の中身に関しては、最低限、取消料をチェックしておきましょう。
旅行業約款は各旅行会社が個別に定めているものですが、
個々に定めた旅行業約款は国土交通大臣の認可が必要であるため、
ほとんどの会社が、前述の「標準旅行業約款」をそのまま利用しています
(標準旅行業約款をそのまま自社の約款として採用する場合、
例外的に認可が不要です)。
その結果、ほとんどの会社が同じ内容の約款になっています。
ですから「根本的に旅行者不利な約款になっている」という可能性は低いでしょう。
しかし、取消料などの条件を細かく変えてある会社がないとは限りません。
たとえば、標準旅行業約款では、
3週間以上前にキャンセルした場合には取消料がかからないことになっていますが
(日帰りを除く国内旅行の場合)、ここの部分を「4週間前から取消料が必要」
というふうに書き換えてある旅行会社が、ひょっとしたらあるかもしれません。
そうでなくても、「約款なんてどうせだれも読まないだろう」とたかをくくって
(あるいは担当者が約款について理解していなくて)、
約款に示してあるより多額の取消料を請求する旅行会社があるかもしれず、
事前にその会社の約款本文を確認しておくことが重要です。
約款に書いてあるより手数料が安いぶんには問題ありませんが、
約款より高い手数料をとるのは契約に違反する行為であり、
約款に示されているより高い料金を支払う必要はありません。
さっそく約款をチェックしてみたら「具体的な取消料」が載っていなかった…こんな経験をする方もいるかもしれません。
標準旅行業約款では、具体的な取消料(3週間前を過ぎると20%など)
は本文中ではなく「別表」に定められているのですが、
約款本文だけを Web
に載せて満足し、別表を省略してしまっている会社がけっこうあります。
旅行者にしてみれば、重要事項である取消料が分からず、役に立ちません。
これも約款を軽視していないかどうかのチェックに使えます。
以上では約款に注目した見分け方を説明しましたが、そのほかに
「心配なら通販ではなく実店舗で買う」「口コミや体験談を参考にする」など、
一般の商品を買うのと同じような方法も当然あります。
バスツアーは、ある旅行会社が募集・企画を行う旅行であり、
それとは別の旅行代理店がツアーを販売していることも珍しくない、
というのは前述のとおりですが、
それでも「募集・企画している旅行会社から通販で直接買う」のと
「最寄りの代理店(実店舗)で買う」のを比較すると、
後者のほうが多少は安心感があります(ただし、
最寄りの代理店にそれなりの信用があることが大前提です)。
かりに参加したツアーで不当な扱いを受けた場合、
代理店に文句を言えば対面で交渉ができますし、
募集・企画を行った旅行会社とかけ合ってくれるかもしれません。
また、インターネットなどで「過去に同じツアーバスで旅行した人」
の体験談を探すのも有効でしょう。