路線バス風のバスツアー(ツアーバス) Part 3
乗車当日編

 一部の節を「折りたたむ」機構を試験的に導入しています。 詳細については「折りたたみ機構の試験導入について」をお読みください。

Index

  1. 予約・支払い編
  2. 車両編
  3. 乗車当日編
  4. 番外編:首都圏・関西間の各ツアーバス比較

バス乗り場:路上が基本、バス停なし

 ツアーバスを初めて利用する人が一番面食らうのが「バス停がない」ことです。 路線バスなら、主要駅だとバスターミナル、 そうでなくてもバス停のポールぐらいはあるものですが、 ツアーバスの場合、都心の主要駅でも路上で乗降することが多いのです。

目印が必須の路線バス、目印を作れないツアーバス  

 路線バスの場合、 停留所にバスの時刻や運行系統を掲示することが義務づけられています (旅客自動車運送事業運輸規則第5条)。 そのため、バス停には最低でもポール状の目印が立っています。
 一方、ツアーバスの場合、 「乗り場に目印を作ってはいけない」という決まりはないと思われます。 が、バス停を作るためには歩道上に場所を確保する必要があり、 道路占有の手続きはかなりめんどうでしょう。 既存のバス停に貼り紙でもさせてもらえばいいのですが、 路線バスを運行する会社が、商売敵のツアーバスに場所を貸すとは思えません。
 上記のような事情ですから、路線バスのターミナルにあるような待合室など、 ツアーバスに望むべくもありません。 雨が降れば傘をさしてバスを待つことになります。

名目上、不定期運行

 余談ですが、ツアーバスは、「路線バスだけに生じる義務」を回避するために、 実質上は定期的でも名目上は「3カ月間の期間限定(=不定期)」という扱いになっています。 ほとんどのツアーは「7月1日から9月30日まで毎日出発」のように、 3カ月程度でいったん区切りを入れているはずです。
 立派なバス停を設けてしまったら、 「それで不定期と言えるのか、 定期的な運行なら路線バスだろう」と指摘されてしまう可能性があります。

路上集合、路上乗降?  

 ツアーバスの場合、「発車時刻」のほかに「集合時刻」が設定されていて、 集合時刻までに指定された場所に集まることになっています。 そしてその集合場所は、多くの場合、単なる路上です。 前述のとおり、路線バスのような「固定された目印」はなく、 あったとしても受付の人が旗を持って立っている程度です。 受付の人がバスに乗ってやってくる場合、 バスが来るまで目印が何もないこともあります。 そんなわけで「目印を作ってほしい」という要望を出す人が多いようですが、 それができない理由はすでにお分かりでしょう。
 集合が路上なら、乗車も路上です。 ツアーバスには専用のバス停はないので、通常、バスは公道上に停車し、 「路上駐車」の状態で乗降を行います。 場合によっては20分、30分と停まっていることもあります。 観光バス用の乗降スペースが確保されている場所、 駐車場を借りてそこで乗降している場所もありますが、 そういう箇所ばかりではありません。

首都圏、関西の定番乗車場所

 首都圏だと、 新宿での乗車場所は都庁の大型バス専用駐車場が定番ですが、 同時に「新宿西口 東京三菱 UFJ 銀行前」という「路上」も定番の乗車場所となっています。 また、東京駅付近だと、たいてい路上からの乗車になるようです。
 関西では、京都が八条口の観光バス駐車場、大阪が中津のモータープール、 神戸が三宮の観光バスステーションというのが定番で、 乗車場所は比較的まともです。
 なお、首都圏、関西とも、時間のかからない降車はほとんどの場合が路上です。


集合・発車時刻:20分前集合、それでも定時出発できない?

 路線バスの場合には、時刻表に出発時刻が書いてあって、 その時刻までに行けば乗れるというのがふつうです。 しかしツアーバスの場合、たいていは出発時刻の約20分前に集合時刻が設定され、 あらかじめ受付を済ませてから乗るということになっています。

遅刻者を待つ?待たない?  

 ツアーバスの場合、発車時刻よりも約20分前に集合するので、 発車時刻には問題なく発車できそうなものです。 しかし実際には、必ずといっていいほど遅刻者がいて、 遅刻者を待って出発が遅れることが多いのです。 ツアーバスでは乗客の氏名と連絡先を把握しているので、 発車時刻に全員が揃っていないと、遅れている客に電話をかけるようです。 それで「あと10分ぐらいで着きます」とか 「近くまで来ているけど場所が分かりません」とかいう回答だと、 やはり出発を待ってしまうことになります。
 一方の路線バスは、 発車時刻を過ぎたら遅刻者を待たずに出てしまうことがほとんどです。 乗客の氏名を把握していない路線では待ってもしょうがないでしょうし、 公共の乗り物ですから、遅刻した人を待つ義理もないでしょう。

待っても苦情、待たなくても苦情

 遅刻者を待つと、当然、バスは遅れます。 目的地まで直行するならともかく、途中乗車地で待たされる人はたまりません。 スタッフが誰もいない深夜の乗り場で、 何の連絡もなく30分も1時間も待たされれば、誰でも不安になるでしょう。
 しかし、実際には「乗り場が分かりにくくて遅刻したのに、 バスが待ってくれなかった」という苦情もあるようです。 ツアーバスの利用者は寛容でないといけません。


受付体制:地上スタッフによる受付が原則だが…

 乗車時の受付体制は路線バスとツアーバスでだいぶちがいます。
 路線バスの場合、バスに行き先が書いてあるので、乗客が自主的にバスに向かい、 バスの運転手さんにきっぷを見せるというのがふつうです。 ターミナルでは補助として地上係員がいることもあります。
 一方、ツアーバスの場合、 多くのバスが集まる主要な集合場所では地上スタッフが待機しており、 スタッフに名前を告げた上で、 どのバスに乗ればいいか指示を受けるというのがふつうです。 利用者は「今晩乗るバス会社」を知らないうえ、 「東京」「大阪」などバスに行き先が書かれていないことも多く (行き先を書くと「路線バスまがい」という批判を受けるためか、 ツアー名を表示するのが一般的です)、 しかもバスが一般道の路肩にずらっと並んでいるだけということもあるので、 誘導は必須といえるでしょう。

都心ではスタッフ不足

 多数のツアーが集中する都心部の集合場所では、 慢性的な地上スタッフ不足が指摘されています。SWA の乏しい経験では、新宿西口の路上が特にひどいようです。 (関西側の出発地はそれなりに落ち着いているようです。)
 歩いていればスタッフらしき人は見かけるものの、 そもそも誰がどのツアー担当なのかが明確でなく、 しかも数が足りないので常に大行列ができていて、質問もろくにできません。 不慣れな旅行者は時間に余裕を持ちましょう。

運転手による受付も  

 一方、比較的マイナーな乗車地を中心に、バスの運転手さんが直接受付を行う、 ということもあります。
 この場合、バスが来るまでスタッフ不在ということになります。 バスが遅れればスタッフの到着も遅れ、到着までの間は何のフォローもありません。
 また、乗客は「乗るべきバス」がどこの会社でどんな色か、 ということを知らないのに、「バスで待っていれば乗客は集まってくるもの」と思い、 バスから出ないで待っているスタッフも時にはいるようです。 旅行者も、ただ案内されるのを待つのではなく、 自分でバスを見つけ出す努力が必要といえます。


付加サービス:必要なものは自分で揃えるつもりで

 夜行の路線バスでは、最近、 飲み物やおしぼりなど「無料の付加サービス」が縮小傾向にあります。 しかし、格安便でなければ、 毛布(ひざ掛け)程度は備え付けてあるのがふつうです。
 一方のツアーバスでは、座席以外のものは何もないのがふつうです。 もし、特に備え付けてあれば、 ツアーのパンフレットに「ひざ掛けつき!」と誇らしげに書いてあることでしょう。 (ただ、備え付けてあっても、清潔かどうかは保証の限りではありません。SWA が以前に利用した某ツアーバスでは、 端がちぎれかかっている薄汚れた毛布が置いてありました。)
 特に女性の場合、ひざ掛けがないと困るという人もいると思いますが、 バスに備え付けのものをあてにせず、自分で持ち込むのが無難です。


途中経路:どこを通っても自由だが…

 路線バスでは、始発から終着までの経路は厳密に決められていて、 通行止めでもない限り、勝手に迂回することは認められていません。
 一方のツアーバスは、途中の経路に特に決まりはありません。 「乗客一人一人を目的地に届ける」という目的を達成できれば、その手段は自由です。 渋滞状況を見ながらルートを選択できるという点では、 ツアーバスのほうが柔軟でよいといえます。

乗り継ぎあり?  

 ツアーバスの場合、最初に乗ったバスが最終目的地まで行くという保証はなく、 途中でバスを乗り継ぐこともあります。
 典型的なのは、横浜→東京、神戸→大阪など、 出発地からしばらくの間は複数ツアーの客を1台の「シャトルバス」にまとめ、 東京なり大阪の「バスが集結する地点」でそれぞれのバスに乗りかえる、 というやり方です。

乗車地、下車地は直前変更不可  

 以上のような仕組みのため、ツアーバスでは、 乗車地、下車地を直前に変更することはできないのがふつうです。
 たとえば「東京から乗車」と予約しておいたのに、当日いきなり横浜に現れると、 名簿に名前がないので受付で混乱するはずですし、 シャトルバスの座席に空きがない可能性もあります。 「横浜から」で予約して東京に現れる場合でも、 横浜で「来るべき人が来ない」と騒ぎになり、他の利用者に迷惑をかけます。
 また、「大阪で下車」と予約しておいたのに、当日京都で降りようとした場合、 バスが実際に京都に停まれば、おそらく降ろしてくれるでしょう。 しかし、乗っているバスがそもそも京都を経由しないこともあり得ます。 ツアーバスでは、京都で降りる人を1台のバスにまとめて、 残りのバスは大阪へ直行ということがふつうに行われているからです。

高速代をケチるバスも…  

 これは気にならない人にはどうでもいいことですが、 ツアーバスでは、時間に余裕があると見るや、 高速道路を降りて一般道を走り出す運転手さんがいることを付記します。
 SWA の経験した例では、大阪から東京へ向かう便で、 京都で最後の乗客を乗せたあと、京都東から名神高速に入ったはいいものの、 約20km走った栗東でさっさと高速を降りてしまい、 以後は国道1号を東名阪道の亀山インター(推定)まで走った、 ということがあります。 ずっと名神を走るより近道にはなっていて、理にかなってはいるのですが、 どうしても加速、減速が多くなり、気になりました。



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最終更新: 2006年 6月18日
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