節約の発想 近距離編 Part 2
まず地図を見よ

 一部の節を「折りたたむ」機構を試験的に導入しています。 詳細については「折りたたみ機構の試験導入について」をお読みください。

Index

  1. 総論:交通費を安くするには
  2. まず地図を見よ
  3. 交通費は「足で稼ぐ」
  4. 路線バスを使いこなす
  5. 鉄道各社の得意分野を知る

 たとえば、一度も行ったことのない場所に行くとします。 自宅の最寄り駅から目的地まではどうやら電車1本で行けなさそうです。
 こんなとき、たいていの人はまず鉄道の路線図を見るのでしょうが、 このページでは路線図だけでなく地図も見ることを提案します。


行程を俯瞰する

 実際の地形に即した地図を見ることで、 出発地から目的地までの行程にムダがないか、確認することができます。 鉄道の路線図は実際の地形に忠実というわけではないので、 路線図だけを見て行程を考えると、思わぬ遠回りをすることがあり得ます。

 道路地図の上で出発地と目的地を探し、直線で結んでみましょう。 その直線に沿うような鉄道あるいはバス路線があるでしょうか?  また逆に、路線図を見て選んだ経路は、 地図上でまっすぐ目的地に向かっているでしょうか?
 こうして、移動経路を人工衛星から見下ろすように検討してみると、 路線図を見て思いついたルートが遠回りでないかどうかが分かります。
 さらに、「こことここの間を歩けば、3社ではなく2社の乗り継ぎで済む」 「こことここの間をバス1本で移動できれば近道になりそうだ」 などといった発想が生まれやすくなります。


近くの駅はほんとうに1つだけか

 地図を見ることの効果はもう1つあります。 目的地付近にどんな交通機関があるか把握できることです。

 初めての場所はもちろん、何度も通っている場所でも、 ひとたび「おすすめ経路」を提示されると、 その他の経路を検討しようとしなくなりがちです。 特に「公共交通機関を降りてから最終目的地まで」の間はこの傾向が顕著です。

 たとえば、週に1回、生け花の先生の自宅まで通うとします。 初回に「どうやって行けばいいんですか?」と尋ねたところ、 先生からお手製の案内図をもらい、それを見ながら駅から歩いて無事到着。 以後は道順を覚えたので、最寄り駅から先生宅まで、 いつもの道を往復するだけ。いつもの道を一歩外れると、 100m先に何があるかも分からない…そんな人も多いことでしょう。
 こんなとき、先生宅の周りの地図を見てみると、意外な発見があるかもしれません。 たとえば、先生宅からいつもと反対方向に10分歩くと別の路線の駅があったり、 近くの道路にバスが走っていたり。 先生宅が山の上のニュータウンや田んぼの中の一軒家だと望み薄ですが、 都心にほど近い平野部なら、「代案」は意外に見つかるものです。 目的地が「先生宅」でなく「都心部の会社事務所」であれば、 代案のないほうが珍しいぐらいです。
 そうした「別の交通機関」が見つかればしめたもの。 前のページで紹介した「使う会社数を減らす」「定期券を有効活用する」 などの手法を適用できる可能性が高まります。


インターネットなら地図も無料

 「でも、だからってわざわざ地図を買うの?  浮いた交通費より地図代のほうが高くない?」…そう思うのはもっともな話です。 地図なんて毎日使うものでもないのに、いざ買うとなるとけっこう高いものです。 かといって、立ち読みで済むかというとそういうわけにもいきません。 (道に迷ったらコンビニエンスストアに入って地図を立ち読みする、 という剛の者もいますが、決しておすすめはしません。)
 しかし今や「IT革命」が死語になるほどの時代です。 インターネットで用が足ります。試しに「地図」というキーワードで google 検索してみてください。検索結果のトップ10は、ほとんどが無料地図サービス、 つまり「日本全国の地図を無料で見られる Web サイト」です。
 以下では、代表的なサイトをいくつか紹介します。

元は数種類だけ

 実際には、日本全国の電子地図を作っている会社は数社しかなく、その数社の「直営 Web サイト」を除くと、あとは「地図会社からデータの提供を受けて、 地図と関係のない会社が運営する Web サイト」です。
 以下では、サービスの元となる電子地図を作っている会社ごとにサイトを分類しています。 (すべて列挙することが目的ではないので、メジャーどころに限ります。)

バス停が見えるアルプス社  

 まずは「アルプス社」系列のサイトから。 アルプス社の電子地図を使ったサイトはかなり多いのですが、「Mapion」「Yahoo! Maps」あたりが有名どころです。
 「交通費節約用」という観点から見たとき、アルプス社の地図で特筆すべきは、 バス路線やバス停まで描かれているという点です。 といっても全国すべてのバス停が描かれているわけではなく、 「大都市圏」や「地方都市の中心部」などに限られますが、 人口比ではかなりの部分をカバーしているものと思います。 電車にくらべ、バスは乗り場や経路が分かりにくく、 地元に住んでいないと乗るのにちょっと勇気がいりますが、 この地図を使えば降りるべき停留所やバスの経路がそこそこ分かります。
 また、Mapion の「大きな地図」(Mapion BB)は、無料で大きな地図が見られるのが便利です。 ブラウザの横幅いっぱいに地図を表示でき、広い範囲を見渡せます。 画面の中央に小さな地図が出るだけのサイトが多い中、頼もしい存在です。 最近になって地図のスムーズスクロールも可能になりました。

「フリーワード検索」に差

 ただ、Mapion のフリーワード検索(「○○市××町123-4」 などの文字列を直接入力する方法)では、 三大都市圏以外の詳細住所検索ができないようです。同じデータを用いているはずの Yahoo! Maps では対応しているというのが不思議ですが、この点に関しては Yahoo! Maps のほうが便利です。
 Mapion でも、都道府県→市町村→…と「住所リスト」を何階層かたどっていけば、 全国どこでも番地・号まで検索が可能ですが、 住所をコピー&ペーストで貼り付けるような使い方ができたほうが便利ですよね。

ルート探索が便利な MapFan Web  

 次に「パイオニア」系列。MapFan Web が代表例です。
 MapFan Web で特に便利なのは、出発地点と目的地を指定すると、 その2点間の経路と距離を自動探索してくれる「ルート検索」機能です。 まさにカーナビと同じ機能ですが、私はこれをもっぱら「徒歩用」に使っています。 主要都市だとけっこう細い道まで載っていて、 車ではちょっと避けたいような近道もちゃんと教えてくれますし、 何より距離が出るのが便利です。歩く時間をかなり正確に見積もれます。
 交通費節約のためには、多少の距離なら歩くのが基本です。 「この距離なら歩くか? さすがにあきらめるか?」を判断する材料として、 この機能はかなり有用です。

元はカーナビ

 パイオニアが地図を作っているというのは、 音響メーカーというイメージからはやや意外かもしれませんが、 もともとカーナビ用に作り始めたようです。 ルート検索機能が備わっているのも納得できます。
 なお、実際に地図を制作しているのは子会社の「インクリメントP」で、 この会社が「MapFan Web」を運営しています。また、同じ地図データを使って、 複数の会社が似たようなサイトを運営しています。

スクロールと縮尺で「滑らか」なちず丸  

 お次は「昭文社」系列。 紙の地図では有名どころですが、電子地図では若干地味な印象です。 いちおう自社で「ちず丸」という Web サイトを運営しているのですが、 実は私、この文書を作るまで利用したことがありませんでした。
 特徴がなければ紹介するのをやめようかと思っていましたが、 実際に使ってみると、スムーズなスクロールがかなり快適でした。Web の地図サービスで視点を移動しようとすると、 「1画面単位」「半画面単位」で一気に移動したり、 あるいは「クリックした場所を中央にして地図を再表示」したりというのが一般的ですが、 「ちず丸」では、 マウスで地図をドラッグする(引っ張る)ことで連続的に移動が可能です。 (最近になってようやく他社も追随してきました。)
 その他、地図の縮尺を連続的に変えられるのも便利です。 たいていのサービスでは、縮尺が「1/12500」「1/25000」などと固定されていて、 1/12500より広範囲を見ようとするといきなり1/25000になってしまうのですが、 「ちず丸」ではその中間の縮尺も無段階で選べます。

スクロールは快適?

 連続的にスクロールできるのはいいのですが、 スクロールのたびに、新たに表示する部分の地図データをダウンロードするので、 タイムラグが若干あります。ADSL など、レスポンスのよいネットワーク環境であればそれほど気になりませんが、 私は外出時に「レスポンスの悪い環境」で利用することが多いので、 「ちず丸」を常用するには至っていません。
 また、「連続的なスクロール」としては後発となる Mapion BB では、表示範囲外についてもある程度の地図データをダウンロードしているようで、 細かなスクロールだと新たなダウンロードが発生しないこともあります。 私の主観ですが、こちらのほうが快適です。

詳細把握には便利なゼンリン  

 最後に「ゼンリン」系列。言わずと知れた住宅地図の版元で、 自社サイト「its-mo Guide」のほか、 「Google マップ」など、何社かに地図データを提供しているようです。
 主に住宅地図を作っている会社なので、建物のデータはかなり詳細です。 「この細い道はどうなっているのか」といった調べ物にも向いています。
 ほかに「バス停の位置が描かれている」という特長もありますが、 バス停の名前は分からないほか、バスの走る経路は描かれていないので、 停留所のポールの位置を確かめるぐらいにしか使えません。
 一方、駅から1km程度の範囲を見渡すときにはそれほど特長がなく、 個人的にあまり見やすいと思わないので(慣れの問題だと思いますが)、 私は常用していません。 ただ、他の地図サービスで判明しないような詳細情報も調べがつくことがあり、 最後の切り札としては有用です。


それでも買いたい「紙の地図」

 以上のように Web でだいたいの用が足りる世の中ではありますが、 それでもあえて、自宅付近を網羅した「紙の地図」を1冊買うことを、 最後におすすめします。

「一覧性」を持ち出せる  

 紙の地図のよさは、広い範囲を一望できる「一覧性」です。 いくらパソコンの画面で大きな地図を見たとしても、 紙の一覧性にはまだまだかないません。 広い範囲を見渡してこそ生まれる「節約の発想」もあることでしょう。
 また、紙の地図は外に持っていけます。電子地図も印刷すれば外に持ち出せますが、 印刷した狭い範囲のことしか分かりません。 最近では「この地図を続きを見たい人はこのQRコードを携帯電話で撮影して…」 などというサービスが花盛りですが、あの狭い画面で地図を見ると、 かなりいらいらするのではないかと想像します。
 そんなわけで、 自分の住んでいる都道府県の地図は1冊持っていても損はないのでは、と思います。

地図選びのポイント

 地図にもいろいろな種類がありますが、 私は以下のような点に気をつけて地図を選んでいます。

折りたたみではなく冊子タイプ

 1枚の大きな紙を折りたたんだ地図は、 一覧性、連続性という点では優れているものの、 いちいち広げたりたたんだりするのがめんどうで、結局は使わなくなります。

縮尺、方角は全地域で統一

 見開き2ページに1都市全体を無理やり詰め込む「都市地図」のたぐいだと、 ページごとに縮尺や方角(北が上かどうか)が微妙に異なることがあります。 こういう地図だと、何ページかを見比べたときに距離感が狂います。 また、町と町の間の関係が見えないので、 「こことここの間って、電車で移動するとけっこう距離があるけど、 直線距離は意外に近かったんだ」といった発見を妨げる恐れがあります。 あまり実例はないと思いますが、 紙面に無理やり収めるために歪んだ地図を描いてあるようなのは論外です。
 広範囲を見渡すことを考えると、掲載範囲をメッシュ状に分割し、 どのページを見ても同じ縮尺、同じ方角という地図のほうがいいでしょう。

乗り物用に10万分の1、徒歩用に3万分の1

 片道数十km程度の移動を想定すると、全行程を見開き1ページで見渡すには、 10万分の1程度の縮尺が適当ではないかと思います。 「地図の1cm=実際の1km」と、換算方法も明快です。
 いっぽう、交通費節約のために1駅間を歩くようなことを考えると、 3万分の1程度の、より細かい地図がほしくなります。 10万分の1程度ではどうしても主要道しか載らなくなりますが、 3万分の1程度になると、車の通れないような道もたいてい載っています。

あればうれしい「バス路線」、意外な盲点「地下鉄」

 鉄道の描かれていない地図はまずないでしょうが、 バス路線が描かれているかどうかはものによります。当然、描いてあるほうが便利です。 バス停の位置が描かれているだけでなく、バスの経路が示されていると、 「この駅からここまではバスがありそうだな」という予想が立ち、 詳細を調べてみようという気になります。
 また、都心部の地図を買う場合、 地下鉄の駅が描かれているかどうかは要チェックです。 線路が地上から姿を消したとたんに鉄道を無視してしまう地図もたまにあります。

おすすめは「詳細道路地図」

 これらの条件を満たす地図はいくつかあると思いますが、 今のところ、私が愛用しているのは都道府県別の詳細道路地図です。
 具体的には、昭文社の「県別マップル」を愛用しています。 1冊2000円強と少々値は張りますが、 県内全域が3万分の1(広い県は人口の少ない地域が6万分の1、 狭い県は2.5万分の1/5万分の1)でカバーされていて、 巻末に10万分の1の広域地図がついています。 さらに大都市の中心部は1万分の1程度の詳細図もあり、 県内全域で路線バスの経路・停留所もちゃんと分かります。 もともと「郵便局めぐり」という妙な趣味のために買ったものですが、 その他の用事にも使え、ずいぶん重宝しています。

ほかにもあります

 同じ昭文社の発行で、首都圏の中心部(東京都に限らず、 周辺の県まで含むわりと広い範囲)が3万分の1で載っている地図もあるようです。 おそらく「スーパーマップル広域首都圏道路地図」だと思います。 首都圏在住なら、1冊で済むこの地図のほうがいいかなと思いました。
 もちろん、他社にも同様のものはあると思いますので、 もし新たに買おうと思った人は、書店でじっくり見比べてみましょう。



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最終更新: 2007年 4月 8日
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