節約の発想 近距離編 Part 3
交通費は「足で稼ぐ」

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Index

  1. 総論:交通費を安くするには
  2. まず地図を見よ
  3. 交通費は「足で稼ぐ」
  4. 路線バスを使いこなす
  5. 鉄道各社の得意分野を知る

 交通費節約の極意は「歩く」ことです。 何せ、自分の足で歩けば交通費はタダなのですから。
 といっても、目的は散歩ではなく交通費の節約ですから、 ここでは距離のわりに交通費をかせげる歩きかたを考えます。 家から目的地まで全部歩くのは多くの場合に非現実的ですし、 目的地の1駅手前で降りて歩くというのも、 区間によってはまったく節約にならない可能性があります。


目的地の近くがキモ

 たとえば自宅から20km先の目的地へ行くとき、 「交通費節約のため、多少の距離なら歩くぞ」と決めたとします。 では、自宅から目的地までの間で、歩くのはどのへんでしょう?
 多くの場合、目的地の近くで歩くことをまず検討し、 その周辺の地図を見るのが正解でしょう。

 「自宅から最寄りの駅(バス停)まで」というのは、 ふつう、節約に関して研究し尽くされています。もちろん、 これを機に自宅近くの地図を見直してみるというのも大いにけっこうですが、 新たな発見はあまり期待できません。
 一方、目的地の近くは自宅近くと比べて土地勘がなく、 「少し歩けば利用できる駅」や「思いつかなかった最短経路」など、 地図を見れば何か新たな発見が期待できます(後者は歩くのと関係ありませんが、 思わぬ副産物ということで)。
 というわけで、どこか知らない場所へ行くことになったとき、 私はまず目的地の住所を(番地単位まで)調べ、Web の地図サービスに突っ込んで、詳細な地図で正確な場所を把握します。 その後、少し広域の地図に切り替え、近くにどんな駅があるかを探します。 定期券を持っている区間の駅、 あるいは「自宅最寄り駅と同じ会社の駅」から歩けるようならしめたものです。

例:東大駒場キャンパスへ行ってみる  

 たとえば、小田急の定期を持っている人が東大駒場キャンパスへ行くとします。
 最寄り駅は京王井の頭線、その名も「駒場東大前」駅で、 たいていの人はここで「じゃあ下北沢から井の頭線だな」と思って、 それ以上考えるのをやめるわけですが、 付近の地図を調べると(ちなみに住所は「目黒区駒場3-8-1」です;東大の Web ページを調べると分かります)、「東北沢」「代々木上原」「代々木八幡」と、 徒歩圏内に小田急の駅が3駅もあることが分かります。
 見たところ最も近そうな代々木八幡駅への距離を「MapFan Web」の「ルート検索」で調べてみると、約900mと出ました(裏門から起算)。 歩いても10分そこそこだろうという見当がつきます。

散歩もまた楽し

 徒歩移動がエスカレートすると、交通手段を通り越して散歩になってしまいます。 私の場合、小田急の定期で京王線の明大前へ行こうとして梅ヶ丘から歩いたとか、 JRの定期で赤坂へ行こうとして信濃町や四ツ谷から歩いたとか、 いろいろ経験があります。それぞれ距離は2km以上あります。
 20分も30分も歩くようだと、それは節約の手段というより散歩になってきますが、 散歩は散歩で楽しいものです。 このページの主旨からは外れますが、都心でも意外に静かな小路が残っていたり、 地名だけ知っていた場所の実際の風景を初めて見たりと、いろいろな発見があります。


「1社1駅間」は歩けのサイン

 また、自宅近く、目的地近くに限らず、 「ある会社にわずか1駅間だけ乗る」ようなことがあれば、 それは「節約のために歩け」というサインです。 1駅間が5kmもあると大変ですが、都心部なら駅間は1km前後というのがふつうです。 歩いても知れています。
 特に「地下鉄に1駅だけ乗る」という場合には要検討です。 地下鉄は人口の多いところを走っていて、駅間はたいてい1km以下です。 地下鉄の上はたいてい道路なので「線路に沿った道路がなくて遠回りを強いられる」 ということはめったにありませんし、 場合によっては線路に沿って地下道が延びていて、雨の日や寒い日も快適です。

 私がよくやるのは有楽町から築地までの散歩。 築地市場に何かうまいものを食いにいこうというとき、 有楽町までJRで来て、そこから築地まで歩きます。 ふつうなら、日比谷あるいは銀座から日比谷線に乗って行くところですが (銀座から築地まで2駅)、さすがは東京の中心部、 2駅ぶん歩いても20分とかかりません。 しかも、途中の東銀座までは線路に沿って地下道があり、 多少のアップダウンを気にしなければ、暑い日や寒い日、雨の日も快適です。


都心の定期券は宝の山

 上記の2項目と関連しますが、都心を通る定期券を持っている人は、 あらかじめ「定期券の経路上の駅から半径1km程度の範囲」に何があるか、 調べておくといいでしょう。その理由はもちろん、 「できるだけ定期で降りられる駅から歩くため」です。
 特に首都圏の都心部では、複数の路線が入り組んで走っているので、 ある駅から10分なり15分なり歩くと別の路線の駅に着く、ということがよくあります。 そこで、「定期券の経路上から歩いて行ける駅(半径1km程度?)」をあらかじめ頭に入れておくと、 どこかへ行くときに「あの駅が最寄りなら、どこそこの駅まで定期券で行って、 あとは歩こう」という発想をしやすくなります。

 私は学生時代、都心を貫通する千代田線の定期を持っていましたが、 かなり多くの駅に「定期券+徒歩」で行ったものです。 山手線の駅でいうと、上野(根津から)、御徒町(湯島から)、 秋葉原・神田(新御茶ノ水から)、東京(大手町ないし二重橋前から)、 有楽町・新橋(日比谷から)、渋谷・原宿(明治神宮前から)…といった具合。 同じ地下鉄でも、上野広小路、末広町、日本橋、銀座、東銀座、虎ノ門など、 15分ぐらい歩く気があれば相当な数の駅に行けました。
 別に千代田線に限りません。丸ノ内線でも銀座線でも、あるいはJRでも、 都心を通る定期券は「宝の山」です。


一般論:同じ会社で1駅縮めても効果は少ない

 今度は逆に、せっかく歩いても節約効果の少ない例を挙げます。 具体的には、同じ会社で乗車区間を1駅ぶん縮めた場合、 節約効果が概して薄いといえます。

「時給」75円…それでも歩きますか?  

 高血圧の中年会社員が、医者に「毎日10000歩は歩きなさい」と言われて、 会社最寄り駅の1つ手前で降りて会社まで歩くことにした…よく聞く話です。 この場合は歩くことが目的だからいいのですが、 交通費節約のために同じことをやろうとすると、 苦労の割に得るものが少ないのがふつうです。
 電車に1回乗ると最低でも150円前後はかかりますが、 ひとたび乗ってしまうと、その後の運賃の増加は意外にゆるやかです。 たとえば東京・大阪の都市部では、JRの1kmあたりの運賃は約15円。 苦労して最後の1駅間(たとえば2km)を歩いても、 平均的には30円しか節約になりません。 時速5kmで歩ける人がたっぷり1時間歩いても75円。 「時給」75円では、さすがに電車に乗りますよね。
 実際の運賃は1kmごとに上がるわけではなく、 数kmごとに段階的に上がるので、 実際には上記の計算以上に節約できる可能性もありますが、 逆にまったく節約にならないこともあり得ます。 実際に運賃表を見て、いくら安くなるのか確かめてから実行するのが無難です。

とは言いながら…筆者の例

 私自身、たまに「最後の1駅を歩く」ことがあります。
 たとえば新宿のサザンテラスで待ち合わせというとき、 代々木上原までの定期を持っていた私は、 素直に小田急で新宿へ行かず、1つ手前の南新宿から歩いていました。 運賃の差は代々木上原から起算してわずかに20円で、 余計に歩く時間が数分だからこその選択ではありました。

「一線を越えるとき」を見つけよう

 以上のように、一般的には効果の薄い「最後の1駅歩き」ですが、 かなり効果がある場合もたまにあります。 「それはどんなときか」を根本的に解明するのは面倒なので、 電車に乗る前に駅の運賃表をよく見て、 1駅手前で降りるとどうなるか?を確かめるのがいいでしょう。

 たとえば、土浦から有楽町までJRで行くと運賃は1280円ですが、 1つ手前の東京で降りれば1110円。1駅で実に170円も差があります。 一般に、JRで50km以上の距離を移動する場合、 運賃の上がりかたが大ざっぱになる(上がる頻度は低くなるが、 そのかわり上がるときには一気に上がる)ので、たまにこんなことが起きます。
 また、JRの運賃は「都心(東京・大阪)周辺」と「郊外」で異なり、 「都心周辺」から「郊外」へ一歩足を踏み入れたところで、 運賃が一気に上がることがしばしばあります。 こういうところも狙い目ですが、しかし郊外では駅の間隔が相当長いので、 多くの場合、1駅間歩くことが難しいでしょう。



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最終更新: 2007年 4月 8日
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