この文書は本来、世の中の現状について解説するために公開しているものであり、
常に現状に追随することが期待されます。
しかし実際には、最後の更新(ページ末尾に記載)から相当な年月が経過しており、
記載内容は現状に追随していません。
また、この文書を今後更新する予定はありません。
したがって、この文書は本来の目的を達成していません。
最終更新当時の世の中の様子を伝えるという、
本来とは異なる目的で公開を続けているものです。
以上の点を理解のうえ、お読みください。
Part 4 では、これまでに説明しきれなかった雑多な話題をいくつか紹介します。
自分で乗り継ぎを組み立てる場合、気をつけたいのが列車の種別です。
東海道線には、地域によって「快速」「新快速」「特別快速」など、
似たような名前の列車が数種類あります。
しかも、場所によってその「格付け」はまちまちです。
どの列車に乗れば早いか、というのは時刻表を読めば分かることではありますが、
それでも、各地の事情を頭に入れておいて損はないでしょう。
青春18きっぷは「普通列車専用乗車券」ですが、 以下で紹介する快速、新快速などはすべて「急行券なしで乗れる列車」、 つまり普通列車の一種なので、青春18きっぷで乗ることができます。
まず最初に、首都圏(東京・熱海間)の東海道線には、
快速〔アクティー〕という列車があります(だいたい毎時1本)。
快速なので普通列車よりは速く、いくつか駅を通過するものの、
10分前の普通に追いつく程度で、普通列車との所要時間差はそれほどありません。
目の前の普通列車を見送ってでも快速に乗ったほうがいいかどうか、
時刻表で確かめたほうが無難です。
なお、東海道線に乗り入れている湘南新宿ラインには「快速」「特別快速」
と2種類の列車がありますが、
湘南新宿ラインの快速は東海道線内は各駅停車なので、全然速くありません。
いっぽうの特別快速は〔アクティー〕とほぼ同じ停車駅で、
うまく乗り継げば普通列車より速く着くことがあるものの、
「特別だから」と、わざわざ待って乗るほどのことはありません。
東海道線の起点は東京ですが、 最近は「湘南新宿ライン」が東海道線に乗り入れ、 渋谷、新宿、池袋といった東京西部のターミナルとも直接結ばれています。 所要時間もさることながら、直通というのが何より便利です。 東海道線への乗り入れは毎時2本程度ですが(ほかに横須賀線直通が毎時2本あり、 戸塚で東海道線との乗り継ぎが可能)、 東京西部が目的地の人は選んで乗る価値があるでしょう。
次に静岡地区(熱海・豊橋間)ですが、 この区間にはそもそも快速というものがありません(ごく一部の例外を除く)。 もちろん、普通列車どうし追い抜いたり追い抜かれたりということもありません。 ただ、車両の切り離しや連結などのために長時間停車することがしばしばあり、 その間に後から来た列車に追いつかれたり、同方向の列車を先に出したり、 ということはあります。
さらに西へ進んで中京圏(豊橋・米原間)では、
普通のほかに「快速」「新快速」「特別快速」と3種類の列車が走っています
(早朝や深夜には「区間快速」もありますが、
めったに乗ることはないでしょう)。
種類が分かれているからには停車駅もそれぞれちがうのですが、
ちがうといっても1駅か2駅で、所要時間はほとんど変わりません。
快速と名の付く列車に乗っておけば安心です。
半面、普通と快速の所要時間差はかなり大きいので、
普通列車に乗ると相当時間がかかります。気をつけましょう。
これらの「快速軍団」が快速らしい走りをするのは豊橋・岐阜間だけで、 豊橋以東や岐阜以西では各駅に停車します。 そういった区間では無理に快速を選ぶ必要はありません。 昼間の大垣・米原間のように、普通しか来ない区間・時間帯もあるので、 こういうところで快速を待っていたら日が暮れてしまいます。
最後に京阪神(米原・姫路間)ですが、
ここは迷わず新快速に乗るのが正解です。
京阪神では「新快速」のほかに「快速」もあるのですが、快速のほうは郊外(高槻 or
京都以東)で各駅停車になってしまいます(そのため、
郊外では「この列車は『高槻から快速』の普通です」といった案内をされることがあります)。
長距離ではその差は歴然です。
ただ、早朝の上りなど、新快速のまったくない時間帯も若干あります。
そういうときは快速に乗ることになりますが、
あらかじめ時刻表で「新快速に抜かれないか」をチェックするのが無難です。
このように「新快速一人勝ち」の京阪神では、新快速が常に混んでいるので、
目的地が京都や高槻などであれば、あえて快速を選ぶという選択もありです。
昼間の下りだと、大垣方面から米原に着いて、
先発の列車が(高槻から)快速、次発が新快速、ということがよくあります。
快速は新快速に早々と抜かれるものの、到着時刻の差は京都で11分、
大阪で20分で、快速もまだ実用になります。
何度か東海道を乗り継いでいると、列車の編成長がばらばらなのに気付くでしょう。 最短2両から最長15両まで、まさにピンからキリまであります。 東京に2両編成の列車が来るようなことはさすがにないものの、 ある1区間だけを見ても、けっこう差があるのは確かです。
列車がある程度以上の長さになると、
必ず「混んでいる場所」と「空いている場所」ができるものです。
編成が長くなればなるほど両者の差は顕著になってくるので、
空いている場所を選んで乗ることが重要になってきます。
一般的に、長い編成だと先頭車か最後尾のどちらかが空いている傾向にあります。
主要駅はたいていホームの真ん中に階段があるので、
そこから遠ざかるほど空いていくわけです。
駅によっては、長い編成の列車が偏った位置
(先頭・最後尾のどちらかが極端に階段から遠い場所)に停まる場合があり、
こうした場合、不便なところまで歩いていくと、かなり空いているのがふつうです。
また、階段が2カ所あって、一方にだけエスカレーターがあれば、
エスカレーターのないほうが空いているのではないか…など、
いろいろ予想ができます。結局これも、「人の流れを読んで、
他人とちがうことをする」というのが快適さのカギを握ります。
ある列車が何両編成なのか、前もって知ることは不可能ではありません。
書店に並んでいる時刻表には編成長は載っていませんが、Web
を探索すると、「どの列車にどういう車両が来るか」
というのを載せている非公式のページが見つかるでしょう(見つけるには、
たとえば「東海道 普通列車 運用」といったキーワードで検索してみてください)。
ただ、鉄道に詳しい人が「同好の士」に向けて発信している情報なので、
初心者には意味の分からないものもあります。
かなり高度な手法ですが、米原から大阪方面に向かう長浜発の新快速の編成長は、
だいたい時刻表から読み取ることができます。
米原から大阪方面へ向かう新快速は「標準8両、場合により12両」で、
12両のものは、長浜から来た8両に米原で空の4両を連結しています
(長浜から12両ということはありません)。
できれば空いている12両の列車に乗りたいところです。
そこで、長浜発の新快速の時刻を時刻表で追ってみると、
標準3分で着く坂田・米原間を、
6分もかけて走る列車があることに気付きます(坂田は米原の1つ手前の駅)。
この「6分かかる列車」が「米原で4両増結する列車」で、
あらかじめ空っぽの4両をホームに据え付けておいてから、
長浜から来た8両を(客を乗せたまま)後ろに連結して12両編成にします。
長浜発の8両は徐行しながら米原駅のホームに入って、
連結したところでようやくドアが開く(この時点が時刻表の米原着時刻)ので、
3分余計にかかっているわけです。
このような場合、前の4両はしばらく前からドアを開けて待っているので、
大垣方面から乗り継いだ人は空っぽの車両にすんなり乗ることができ、便利です。
なお、「先に長浜発の8両をホームに入れてから、
後に空の4両を連結して出発」という列車もまれにあります。
こちらは、米原の停車時間が10分前後あることでほぼ見分けられます。
ここまで、「いかにして座って楽に移動するか」を考えてきましたが、 たとえ便利な列車で座れたとしても、 思わず席を放棄して降りたくなってしまうことが現実にはあり得ます。
まずは食事。休み休みとはいえ、合計で10時間近くも列車に乗っているわけですから、
間に最低1回は食事をとることになるでしょう。
所要時間を重視するなら、食事は「移動しながらとる」だけでなく、
「旅行開始前にあらかじめ買ってから乗る」ことをおすすめします。
改札内で手軽に、しかも確実にとれる食事といえば、
一般的には駅弁か立ち食いそば程度で、選択肢はあまりありません。
安上がりな食事を求めてコンビニエンスストアを探そうとすると、
主要駅では(駅周辺が「その町の一等地」なので)意外に見つからないことも多く、
事前に調べておかないと意外に時間を食うでしょう。
もちろん、時間的に余裕があれば、改札を出てそれなりの店を探すのもいいでしょう。
ただし「始発列車のある駅」で降りないと、次に乗るときに大変かもしれません。
静岡、浜松あたりが無難なところでしょうか。
食事の話の直後にトイレの話というのも何ですが、これも無視できない問題です。
トイレのついていない列車は東海道線では少数派ですが、皆無ではありません。
特に注意したいのが静岡県内(熱海・浜松間)で、
「銀色の電車」にはほとんどトイレがありません。
また、銀色でないものでも、3両編成を中心にトイレなしのものがあります。
静岡県内では半数程度の列車にしかトイレがないと考えてください。
せっかく足の長い列車をつかまえて無事に座ったのに、
途中でトイレに行きたくなって降りてしまった、なんてことのないように、
行けるときに行っておきましょう。
また、トイレがあっても、
車内が混んでいてトイレまでたどり着けないことがあります。
トイレはだいたいどの列車も神戸寄りの先頭車についているので、
心配な人は意識してここに乗るといいでしょう。
「東海道の乗り継ぎを初めてやるんだけど、
時刻表ってやっぱり買ったほうがいいの?」と、たまに質問されます。
どちらとも言い難い面もありますが、
快適性なんてことを考えずに行き当たりばったり行く人は不要です。
そうでない人でも、あらかじめ予定をばっちり決めてそれを忠実に守ろうという人は、
わざわざ持ち歩く必要はありません。
しかし、快適な乗り継ぎを自分で組み立てるためには、
絶対にあったほうがいいと思います。
もし、単に列車の時刻を調べるだけなら、Web
上で利用できる無料サービスで十分に用が足ります。
JR全線の時刻表そのものを提供するサイトとしては「えきから時刻表」「どこなびドットコム」などがありますし、
発着駅を入力するとその間の乗り継ぎを案内する「乗りかえ案内」のサイトは、
もう数え切れないほどあります(携帯電話向けのサイトもあります)。
このうち、たとえば「スパなび」では、
特急列車を使わない、普通列車だけの乗り継ぎを表示することができます。
これらのサイトを使えば、時刻表を買うまでもなく、
「何時に乗れば何時に着くか」ということが分かります。
そんな世の中ではありますが、時刻表の存在意義がなくなったわけではありません。
「紙の時刻表」は、列車群を鳥瞰できるという点において、
「電子時刻表」よりも便利だといえます。
Part 2 で「快適な乗り継ぎを見つけるためのポイント」をいくつか紹介しましたが、
その多くは、ある列車とその前後の列車との関係がカギになっていました。
こうした「複数の列車の関係」を把握するには、
見開き2ページにできるだけ多くの列車の時刻を印刷した、
雑誌タイプの時刻表が適しています。
前述の「時刻表サイト」でもある程度の列車を並べて表示することはできますが、
1画面に入る列車数・駅数は紙の時刻表には及ばず、どうしても視野が狭くなります。
雑誌の時刻表が「鳥瞰」だとすれば、「時刻表サイト」はせいぜい、
アパートの3階から町を見下ろす程度ではないかと思います。
ただ、そういった「列車間の関係を見る」という使い方をしないのなら、
わざわざ時刻表を買ってくる必要はない、ということもできます。
大事に時刻表を握りしめている人をたまに見かけますが、
そんな人もしばしば Part 2 のポイントを外していて、
何のために重い時刻表を持ち歩いているのか、と思ってしまいます。
書店で売られている時刻表にも何種類かあります。
さて、どれを選んだらいいでしょう。
まず、代表的なのがB5版の「プロ向きの大型時刻表」。「JTB
時刻表」「JR時刻表」の2種類が該当します。
駅の窓口に備え付けてあるようなもので、1050円という価格と約1kgという重さは、
ちょっと「気軽に買って持ち歩く」という感じではありません。
これより一回り小さいのが「持ち歩き用の中型・小型時刻表」。
「コンパス時刻表」「JTB 携帯時刻表」「小型全国時刻表」などです。
ねだんも500〜600円程度で、一部は駅の売店にも置いてあります。
もちろん、そのぶん情報量は少なく、私鉄やバスの時刻はかなり削られていますが、
JRに関しては小さな駅の発車時刻や大都市の通勤電車(山手線、
中央線、大阪環状線など)が多少省略されている程度で、
列車自体が省略されているということは(大都市以外は)ありません。
(コンパス時刻表は小さいながらも全駅掲載です。)
東海道の乗り継ぎ用に買うのであれば、
この「中型・小型」クラスがおすすめです。
ただ、似たような見かけでも、「普通列車をほとんど省略した時刻表」(JTB
スピード時刻表)や、ある地域に特化した時刻表もあるので注意しましょう。
ちなみに私は、以前は必ず大型時刻表を持って旅行していましたが、
最近は帰省の荷物だけで手一杯ということもあり、
よほどのことがない限り家に置いていきます。
もちろん、出発前に下調べは済ませておきます。
時刻表の代わりに、ほぼ同じ重量のノートPCを持ち歩いているので、
もし時刻が知りたくなったらこれで調べます。
携帯電話でも同じようなことができるでしょう。
最後に、快適な乗り継ぎをするために必要なことをまとめると、 結局は以下の2点に尽きるのではないか、と私は考えています。
まず1点目。
列車が混むのは、みんな同じことを考えて同じ列車の同じ場所に乗るからです。
もし、人の流れを完璧に読みきることができれば、
「空いている列車」「空いている場所」が分かり、
自分がそこに乗ることで快適な旅行ができます。
また、混んだ列車・車両に乗る人が1人減れば、
「多数派」の人も少しは楽になります。
「他人に先回りして席を取るテクニック」もある程度は必要ですが、
他人との競争に勝つことを目指すのがこの文書の本意ではありません。
「空いている列車を有効に使って、
結果として座ったまま楽に移動できた」…そんな乗り継ぎをするためのヒントを提供したいというのが、
この文書を公開している真意です。
そして2点目。長い乗り継ぎを幸せに終えるためには、
やはり余裕が肝心だろうと思います。
たとえば「混んでいたら1本見送ってもいいや」という時間的余裕、
あるいは「あまりにも疲れたら途中から新幹線でもいいかな」という金銭的余裕。
時間や金銭の裏付けがあれば、結果として精神的な余裕も生まれるでしょう。
たとえ理由が「貧乏学生で帰省の旅費が惜しい」ということであっても、
東京・大阪間を普通列車で行くなんて、
ある意味では新幹線で移動するよりぜいたくなことです。
時間的にある程度の余裕を持って出かけ、ぜいたくさを満喫してほしいと思います。
金銭的なほうは「ダメなものはダメ」という世界ではありますが、
少なくとも「途中で行き詰まっても新幹線で行ける(or
戻れる)」という程度の額は持ち歩くのが、
旅行者として適当ではないかと思います。
そして、前もって先が読めれば、精神的な余裕もさらに増すというもの。
この文書がそんな「先読み」の一助になれば幸いです。
最後の最後に私事ですが、この文書の展開は、
まさに私の「乗り継ぎ観」の変化そのものということもできます。
私が東京・大阪間で初めて普通列車を乗り継いだのはもう15年も前のことになりますが、
そのころは「早く着くこと」が最大の目標になっていました。
時刻表には習熟していたので、Part 2
で紹介したようなポイントはだいたいつかんでいたものの、
目の前にいる列車を1本やり過ごしてまで快適さをとろうとは思いませんでした。
その後、年に5回も6回も東京・大阪間を乗り継ぐようになりました。
この間になんだか「同業者」が増えたような気がします。
列車体系の変化もあり、主要駅での「競走」も目立ってきましたが、
このころはまだ「混んだ列車でも座ってしまえば問題なし」と思っていて、
主に競走に勝つための方法を考えていました。
さらにその後。編成の長い列車を調べるなどして、
比較的余裕のある列車を中心に乗り継ぐようにしたところ、
その「楽さ」がやみつきになってしまいました。
歳を取ったせいもあるのか、このごろは「自分が座れて、
なおかつ空いていること」を第一目標に列車を選ぶようになってきています。
そのために列車を見送るなんてことも日常茶飯事です。
ボックス席で足を伸ばして座れれば身体が楽ですし、
「だれかを立たせて自分は座っている」などと考えなくていいのは精神的に楽です。
しばらくすると、時間的な余裕がなくなって、
普通列車の乗り継ぎなんてやっていられなくなるのかもしれません。
しかし今しばらくは、
最後に書いたような「余裕のある乗り継ぎ」を続けていこうと思っているところです。